KPMGジャパンが発表した2024年の企業報告調査
KPMGジャパン(東京都千代田区)が発行した「日本の企業報告に関する調査2024」では、企業の統合報告書などの報告書に焦点を当て、その現状と課題を明らかにしています。本調査は11回目を迎え、今回は「マテリアリティ」「戦略と資源配分」「報告媒体の位置付け」に焦点をあてた分析が行われました。特に、サステナビリティ情報の公開の早期化や第三者による保証の受審が重要視されています。また、気候変動や人的資本に関する内容の記載状況も確認されています。
調査の目的と対象
調査は、日経平均株価(以下、日経225)の構成企業が発行した各種報告書、計1,177組織に及ぶ企業が発表した報告書を対象にしています。これにより、現在の企業報告書が持つ特性や改善点が明らかになってきます。
主な調査結果
1.
マテリアリティ評価の現状
調査によると、マテリアリティに関する記載は、2024年の統合報告書では93%、有価証券報告書では85%に達しています。一方、評価の前提となる将来の経営環境についての説明は依然として不足しており、統合報告書で見られるのはわずか40%にとどまります。
2.
ビジネスモデルの説明能力
統合報告書にビジネスモデルが掲載されている企業は90%ですが、具体的な価値創出のプロセスについては明瞭に説明されておらず、収益要因の記載は半数程度です。このため、企業独自の価値創出モデルが理解しづらいという現状が見受けられます。
3.
有価証券報告書との関係性
2023年公開の有価証券報告書は、サステナビリティについての記載を新設し、情報開示の充実が図られています。54%の企業が、有価証券報告書と統合報告書の役割を明示しており、今後のさらなる制度導入に向けて各報告書の役割を明確に整理する必要があります。
今後の提言
KPMGジャパンは、以下の提言を行っています。
- - マテリアリティの認識強化: 経営決定にマテリアリティの認識とそれを企業価値に結びつける行動が必要です。
- - 財務資本の活用: 持続可能なビジネスモデルの確立には、資金の循環的な利用とリスク管理が重要です。
- - 企業報告の目的明確化: 各報告書の目的を見極め、コミュニケーションの戦略を立てることで企業価値を向上させることが可能です。
調査の概要
調査は2024年を対象に実施され、使用されたデータは統合報告書、有価証券報告書、サステナビリティ報告が中心です。KPMGジャパンは、監査、税務、アドバイザリーの各分野にわたる専門ファームから成り、クライアントに対し価値あるサービスを提供しています。
結論
KPMGジャパンの調査は、企業の報告書作成における現状とそれに伴う課題についての意見を明確にしています。特に、サステナビリティ情報の報告の早期化や質の向上が求められる中、今後の企業報告書はより一層の進化を遂げることが期待されます。