敏感肌と知覚過敏のメカニズム
花王株式会社のスキンケア研究所は、京都大学の椛島教授の指導のもと、敏感肌に特有の知覚過敏のメカニズムを新たに明らかにしました。研究によると、敏感肌は通常の肌に比べて、角層深部まで伸びる神経線維が多いことが明らかになりました。このことが不快感の原因となっている可能性があります。
研究の背景と目的
敏感肌とは、普段気にしない程度の刺激に対しても過剰に反応する肌のことです。花王では、この敏感肌のメカニズムを長年研究してきました。バリア機能の低下が主な要因とされていますが、神経活動の活性化がどう影響しているかは十分に解明されていませんでした。
この研究において、花王は肌の神経線維に着目し、敏感肌の特性との関連性を調査しました。
知覚過敏と神経線維の関係
敏感肌が通常の肌と異なる点として、表皮内の神経線維が角層の深い部分まで伸びている点が挙げられます。花王は、20~50代の日本人女性を対象に、健常な肌と敏感肌の神経線維の分布を比較しました。その結果、敏感肌では、角層深部に伸びている神経線維が有意に多いことが確認されました。これは、アトピー性皮膚炎などの肌トラブルに似た特徴を持っています。
表皮タイトジャンクションの役割
皮膚のバリア機能は、表皮のタイトジャンクションによって支えられています。隣接する細胞をしっかりと結びつけ、異物の侵入や水分の蒸発を防ぐ重要な役割を果たします。しかし敏感肌では、表皮のタイトジャンクションを構成するクローディン3という分子の発現が低下しており、その結果として神経線維の伸長が促進される可能性が示唆されています。
新素材の発見とその効果
花王の研究では、神経線維の過度な伸長を抑制するための素材を探索する中で、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸が有効であることが発見されました。この成分を含むプロトタイプ製剤を8週間使用したところ、敏感肌に特有のチクチク感やヒリヒリ感が有意に軽減されることが確認されました。
今後の展望
今回の研究結果は、敏感肌の理解を深めるものであり、今後のスキンケア技術において重要な示唆を与えるものです。花王は、皮膚の構造や機能に基づく研究を進め、敏感肌の人々のQOL(生活の質)を向上させるスキンケア技術の開発にさらなる努力を続けていくでしょう。
この研究成果は、2025年に行われる第50回日本香粧品学会で発表され、会頭賞を受賞することが決定しました。これからの花王の研究に大いに期待が寄せられています。