反強磁性準結晶
2025-04-11 18:20:48

反強磁性準結晶の存在を初めて確認!新たな物質の可能性とは

反強磁性準結晶の発見について



近年の研究において、反強磁性を示す準結晶の存在が明らかにされ、物性物理学の新たな興味の的となっています。これまで準結晶における長距離反強磁性秩序の存在が確かめられていなかったため、本研究の成果は科学の界隈で大きな注目を集めています。

研究の概要


東京理科大学の田村隆治教授を中心とする共同研究グループは、正二十面体準結晶Au56In28.5Eu15.5の反強磁性確認を実証しました。この準結晶は、原子が規則的に配列しつつも周期性を欠くという独自の特徴を持っています。このような構造において、反強磁性が存在することは大きな謎でした。

研究チームは、1984年に準結晶が発見されて以来、この現象に関する検証を続けており、特に2021年には強磁性準結晶の合成にも成功しました。それに対し、反強磁性の存在に関しては理論的にも確認がされておらず、その解明を目指すことが新たな挑戦となっていました。

研究の成果


実験では、粉末X線解析によってAu56In28.5Eu15.5が正二十面体準結晶であることを明らかにしました。さらに、ネール温度6.5Kという極低温条件下で急激なカスプが観察され、反強磁性転移が指摘されました。粉末中性子回折によるデータでも、ネール温度以下での磁気ブラッグ反射が確認され、反強磁性秩序が存在することが立証されたのです。

この研究結果は、国際学術誌「Nature Physics」に掲載され、2025年4月11日に公開されました。物性物理学においては初の試みとして、反強磁性準結晶という新しい研究の分野が開かれました。

研究の背景


準結晶は、1984年にイスラエル工科大学のダン・シェヒトマン博士によって初めて発見されました。その独特な構造は、周期結晶では実現不可能な回転対称性を持っており、異なる物性が期待されています。準結晶の特異な性質は、電気伝導性や熱伝導性、さらには磁性においても通常の物質とは異なる振る舞いを見せる可能性があることから、様々な分野での応用が期待されています。

過去の研究では、スピングラス的振る舞いを示す準結晶の長距離磁気秩序に関する証拠は確認されていませんでした。ですが、強磁性を持つ準結晶が明らかになったことで、今後の研究に大きな影響を与えると見込まれています。反強磁性秩序が確認されれば、物質科学の分野において新しい視点を提供することが期待されていました。

今後の展望


田村教授はこの研究について、「反強磁性秩序は周期結晶に特有の現象だと考えられてきたが、今回の発見により新たな学問分野が切り拓かれた。この反強磁性準結晶はスピントロニクス技術や磁気冷却技術に革新をもたらす可能性があり、大いに期待される」と語っています。スピントロニクスとは、電子のスピンを使った次世代技術であり、この発見はその応用に向けた新たな道を示すものとなるでしょう。

この研究は、日本学術振興会や科学技術振興機構からの助成を受けたものであり、国際的にも注目される成果とされています。今後の研究が更に進めば、反強磁性準結晶は新たな技術として、物質科学が進む上での重要な役割を果たすことが期待されます。


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