医療的ケア児と家族が安心して旅行を楽しむ未来に向けて

2025年5月、アパートメントホテル "MIMARU"の運営を行う株式会社コスモスホテルマネジメントは、医療的ケアを必要とする子どもたちの外出支援を行う一般社団法人"Try Angle"や、医療的ケアが求められる子ども向けのサービスを手掛けるNPO法人"こども未来"と連携し、京都市内で医療的ケア児とその家族を対象とした試泊イベントを実施しました。このイベントは、宿泊体験を通じて、医療的ケア児とその家族が旅行を楽しむための環境を考察するものでした。

医療的ケア児が直面する旅行の壁

医療技術の発展により、在宅での生活が可能となった医療的ケア児の数は増加しており、2021年には「医療的ケア児支援法」が施行され、国や自治体による支援体制が整備されています。しかし、外出や旅行に関してはさまざまな課題が残されています。例えば、医療機器を持ち運ぶために必要な大きなバギーの扱い、外出先の対応が不安要因となること、情報不足による事前準備の困難さという点が挙げられます。また、兄弟姉妹の外出機会が制限されたり、学校行事に参加しづらくなることも問題です。

このような状況は、医療的ケア児とその家族が旅行を楽しむ上での障壁となるため、MIMARUはそうした課題を乗り越えるための取り組みを進めてきました。

試泊イベントの内容

試泊イベントには、医療的ケアを必要とする子どもを持つ2家族が参加し、特に水回りがバリアフリー対応となったアクセシブルルームで宿泊体験をしました。その後、参加者、福祉事業者、宿泊施設が集まり、意見交換会が行われ、それぞれの視点から得られた気づきや課題が共有されました。

対話を通じて明らかになった意見

外出先での受け入れに対する不安や、周囲に迷惑をかけることへの懸念から外出への躊躇があるという声が多く寄せられました。また、医療的ケア児が成長する中でバギーが大型化し、対応が不十分になることも指摘されました。また、実際に外出することで得られる情報やサポート体制の重要性が再認識され、他家族の旅行を支援するための情報共有が不可欠であることも強調されました。

試泊会の様子

参加したご家族は、大量の荷物を持参しなければならないため、自家用車での来館が必要でした。移動中のバッグや医療機器の取り扱いには十分な配慮が必要であり、この点はとても重要な認識となりました。宿泊後は、事前に要望を確認する"コミュニケーションシート"をもとに、快適な滞在が実現されました。広々とした客室で日常とは異なる体験を過ごす中、久しぶりに家族旅行を楽しむ様子が印象的でした。

外食のハードル

旅行中の外食では、広いスペースや特定の設備が求められます。たんの吸引音や特別な食事の必要性など配慮が必要な点も多く、個室やテイクアウトが主な選択肢となることがあります。したがって、飲食店の環境整備も重要な課題であり、宿泊施設の連携だけでなく、街中全体の対応が求められると考えられます。

イベントに参加した人々の声

参加者や関係者は、コミュニケーションの重要性を再認識し、旅行の質向上に向けた様々な意見を共有しました。医療的ケア児を持つ家族からは、旅行をすることの大切さや不安を解消するための配慮が必要であるとのコメントが寄せられた一方、支援団体や宿泊施設からは、今後の改善に向けた積極的な意見も多く寄せられました。このような意見交換は、双方の理解を深め、持続可能な旅行環境の整備に繋がっています。