日本初の放送技術実験
2025年3月8日、株式会社メディアリンクスや他の関連企業が協力し、国内民放として初めてPTPを利用した放送TS信号のFPU伝送実験を成功させました。この試みは、放送とIPネットワークの融合による新たな可能性を開くものとして注目されています。
実験の背景と目的
近年、地上デジタル放送やBSデジタル放送では、映像や音声、データをより高精度に伝送する必要性が高まっています。これに伴い、PTP(Precision Time Protocol)の導入が求められていました。しかし、従来のIPネットワークでは時刻同期精度の観点から、PTPを活用した伝送の実現が難しい状況でした。今回の実験では、この課題に取り組むことを目的として実施されました。
技術的な詳細
実験においては、メディアリンクスのIP伝送装置「MDP3020 SFN」を使用し、約16.6km離れた生駒山から毎日放送本社への信号伝送が行われました。ここでは、PTP時刻同期の精度を向上させるために、セイコーソリューションズ社製のPTPグランドマスタークロックを活用しています。また、国際電気のFPUによる通信路を使用して、信号が映像や音声データに適した形式で伝送されました。
特に注目すべき点は、今回の実験が特殊な機器ではなく、一般的に利用可能な機器を用いて行われたことです。これにより、PTP非対応のネットワークでも安定した信号の伝送が可能になり、これまでの制約が緩和されることが期待されています。実験の結果、受信側ではRPTPという技術により、伝送遅延の平準化が実現されました。
今後の展望
この実験は、放送技術の革新に向けた第一歩といえるでしょう。今後、国際電気と毎日放送では、さらに発展したFPUを用いた実験を行い、異なる周波数での運用や、同一周波数での回線構築に取り組む計画も立てられています。これにより、地上デジタル放送中継の伝送方式が多様化し、精神的な強靭性が増すとともに、災害時などのBCP対策にも貢献できるとされています。
今後もこの技術に基づき、高精度な時刻同期を維持しつつ、放送局の運営が更に効率的になることが期待されます。業界内外からの注目を集めているこの共同実験が、どのように進展していくのか、益々の関心が寄せられることになります。
用語解説
- - PTP(Precision Time Protocol):1マイクロ秒以下の精度で時刻同期を可能にする次世代プロトコル。
- - 放送TS信号:デジタル放送における伝送信号で、映像や音声、字幕データをパケット化したもの。
- - FPU(Field Pickup Unit):テレビ受信現場から無線で映像と音声を送信する装置。
この実験を通じて、放送業界の新たな方向性が示されたことは、今後の技術革新に期待を寄せる要素となっています。