コンプライアンスに関する自主調査レポートの重要性
コンプライアンスの重要性が叫ばれる中、株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR)が実施したコンプライアンスに関する自主調査が注目を集めています。この調査は、企業がどのようにコンプライアンスに取り組んでいるのか、その実態を把握することを目的としています。調査結果の詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。
コンプライアンス意識調査の詳細
調査の概要
調査の結果は大きく四つに分類されています。まず第一に、コンプライアンス体制・姿勢・価値観における企業間の差異が明らかになりました。コンプライアンス専任部門の設置は増加していますが、その一方で兼務型の企業も多いため、体制において完全な整備には至っていないと言えます。さらに、取り組みを支える人員が不足していると感じている企業も約半数に上ります。
次に、コンプライアンスに関する予算についてですが、「現状でよい」と「もっと増やすべき」という意見が同時に増加しています。これにより、企業の投資姿勢には明確な差が見受けられます。コンプライアンス担当者の見解としては、企業価値を高めることを成果と捉える層は依然として多いですが、不祥事を起こさないことを成果と考える意見も増えています。これは、理念としてのコンプライアンスを重視する企業とリスク回避に偏重する企業が同時に存在することを示唆しています。
教育の実施と課題
調査の第二のポイントは、コンプライアンスに関連した教育が幅広く実施されていることです。役員や社員、さらには非正規社員に対する教育が高い水準で行われていますが、教育内容としてはハラスメントや情報管理など、発生しやすいリスクに焦点が当てられがちです。個人の倫理観を育むインテグリティ教育が少ないのは、企業にとって重要な改善点と言えるでしょう。
教育方法はeラーニングや専門講師による研修が主流です。制度面での整備は進んでいるものの、質的な向上、具体的にはマインドへの働きかけが次なる課題として残っています。
調査結果の活用状況
調査の第三の側面として、コンプライアンス意識調査自体は実施されているものの、その結果の活用に課題があることが浮かび上がりました。約60%の企業が定期的に調査を行っていますが、活用方法は経営層の現状把握や現場へのフィードバックに限られているのが実情です。従業員へのフィードバック方法やベンチマークの設定ができていない企業が多く、戦略的な活用には至っていないことが問題となっています。
サプライチェーンにおけるガバナンス強化
最後に、サプライチェーン全体でのガバナンス強化が大きな課題として指摘されています。取引先に対して自社のコンプライアンス状況を把握する企業は約半数に上りますが、実際に取引先に対してのコンプライアンス推進への関与は依然として低いという状況です。特に、セルフチェックやヒアリング、情報交換といった取り組みは、広くは浸透していないのが現実です。
まとめ
この自主調査から得られた知見は、企業がコンプライアンス体制をさらに強化し、意識醸成を図る上で重要な指標となります。今後、企業はコンプライアンスの価値を再認識し、実効性を伴った教育や調査結果の活用に取り組むことが求められています。さらに、サプライチェーン全体のリスクを見据えたガバナンスの強化が急務です。
調査結果は、企業の先行きを左右する重要な情報となるため、しっかりとした理解と活用が期待されます。