新たな漁業の挑戦「山口県室津の定置サステナブル漁業プロジェクト」
山口県室津、ここは海の恵み豊かな地域です。しかし、漁業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。近年の海洋環境の変化や藻場の減少、後継者不足は、漁業者たちに深刻な影響を与えています。そんな中、山口県漁業協同組合室津支店の漁業者たちと株式会社UMITO Partnersが手を組み、新たな「山口県室津定置サステナブル漁業プロジェクト」を発足させました。
プロジェクト発足の背景
室津地区は、温暖な気候と複雑な海岸線によって形成された好漁場です。この地域の特徴は多様な海藻や海草が生息していることです。しかし、近年、豊かな生態系も危機に瀕しています。具体的には、10年前には48人もいた正組合員数が現在では25人と減少し、漁業者の高齢化やコロナ禍の影響で、休業を余儀なくされた漁業者も多くいます。さらに、特定の魚が増えるなど、生態系のバランスが乱れ始めています。
新たな取り組みの目的
このプロジェクトは、藻場保全と自主的資源管理を通じて漁業の持続可能性を追求します。具体的には、定置網を利用した漁業を行う漁業者自身が、小型の魚を放流したり、漁獲データを自ら収集したりすることから始まります。また、県と連携して海洋の資源評価を行い、その結果に基づいて漁業のあり方を継続的に見直すことを目指しています。
プロジェクトの実施内容
主な取り組みとして、小型魚の放流サイズを拡げる、自主的なデータ収集の実施、魚の生息状況の把握、資源管理の見直し、そしてアイゴなどの植食魚の漁獲を通じた藻場への影響の軽減が挙げられます。また、漁業者自らがこのプロジェクトの広報活動に携わり、地域のイベントを通じて新鮮な魚の販売や魚の放流体験を提供しています。
特に特徴的なのは、漁業者が主体となり科学的データをもとに活動を行う点です。環境保全と資源管理を複合的に捉え、それを地域社会に還元することで持続可能な漁業のモデルを構築しようとしています。実際の放流イベントの実施や飲食店とのコラボレーションも行われており、地域全体の活性化に寄与しています。
未来への展望
今後、定置網部会は「環境回復型漁業」の実現に向け、これまでの活動をさらに強化する方針です。また、UMITO Partnersは、プロジェクトで得られた知見をもとに、全国の漁業者が抱える課題を解決する手助けを行う予定です。
漁業者のメッセージ
漁業者の小濱一也さんは、こう語ります。「漁業者自身が海を守りながら漁をする必要があると感じています。これまで漁業の邪魔者扱いされていた海藻も、今では重要な役割を果たしていることを新たに理解しました。仲間たちと共に、昔のような活気を取り戻したい。」
結論
このプロジェクトは、ただ漁獲量を増やすだけでなく、漁業者と地域住民、さらには消費者との間の良好な関係を築くことを目指しています。海の恵みを未来に繋げるため、持続可能な漁業を実現するためには、今後の取り組みが欠かせません。私たちもこの動きに注目し、支援していく必要があります。