半導体進出による賃貸市場への影響分析
近年、熊本県のTSMC(台湾積体電路製造)や北海道千歳市のラピダス(Rapidus)の進出が注目を集めています。これらの半導体工場の設立が、周辺地域の賃貸市場に与える影響についての調査結果を、株式会社LIFULLが詳しくまとめました。
TSMCとラピダスの進出背景
2023年9月に発表された基準地価によると、TSMCが進出する熊本県大津町周辺では商業地と工業地の価格変動が全国1位。また、ラピダスが建設中の工場に近い千歳市では、住宅地の対前年変動率が全国3位という結果が報告されています。このような異常事態は、地元経済や住宅市場に大きな影響を及ぼしていると言えるでしょう。
空室数の動向:TSMCとラピダス
TSMC周辺の状況
TSMCが熊本県菊陽町への進出を発表した2021年10月以降、工場近隣の賃貸物件の掲載数が急減しました。最初の衝撃として2023年2月には、シングル物件で94%の減少が見られましたが、その後、需要の増加により掲載物件数が再び増加。現在では進出発表前の水準を超えてきました。
この回復は、工事関係者やTSMCの従業員の住宅需要が高まったことが背景にあります。不動産業者は通常、空室を募集するために物件を掲載しますが、TSMCの動きによって空室が早期に埋まる傾向が見られ、掲載期間が短縮しています。2023年夏からは新築物件が本格的に供給され、供給と需要のバランスが徐々に安定してきました。
ラピダス周辺の状況
ラピダスが2023年2月に千歳市への進出を発表した後も、賃貸市場において条件は厳しいままです。特に、シングル向けとファミリー向け物件の掲載数が減少が続き、2023年10月時点でも需給は非常に逼迫しています。工事関係者やラピダスの従業員からの賃貸需要が急増しており、空室の減少が続いています。
家賃相場の変化
TSMC周辺の変化
TSMC周辺では、特にファミリー向け物件の賃料が2022年4月に比べて大きく上昇しました。着工から約1年後の2023年夏に新築物件の供給が増加し、2023年10月時点での平均賃料は73,032円と上昇しています。
ラピダス周辺の変化
ラピダス周辺でも同様に、ファミリー物件の賃料は着工月と比べると大きな変化を示しています。特に2023年10月には、家賃が105,409円(着工月比+123.4%)に達し、高騰しています。
まとめ
LIFULLの調査を通じて、TSMCとラピダス周辺の賃貸市場における共通した動向が浮き彫りになりました。両工場の進出による空室数の減少と賃貸相場の急騰の背景には、求められる住宅供給の不均衡があることが伺えます。企業の進出に伴う住宅計画や支援施策の強化、地域の都市計画の見直しが求められる重要な時期に来ています。
今後もLIFULL HOME'S PRESSでは、こうした動向を追い続け、住宅市場に関する貴重な情報を提供していきます。