岐阜県関市の包丁職人が挑むDXによる生産革新と品質維持の秘訣
岐阜県関市に位置する三星刃物株式会社。この会社は、1873年に創業以来150年以上にわたり、地域の伝統を受け継いできた包丁製造の名門です。代表取締役社長の渡邉隆久氏が率いるこの企業は、自社ブランドの包丁「和NAGOMI」の需要増加に対応するため、製造工程のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進しています。この取り組みによって、月産数を従来の1,500本から2,100本へと3割以上も増産することに成功しました。しかし、その過程で最も重要視されたのは、品質を一切妥協しないことでした。
伝統技術と革新の融合
三星刃物が誇る「和NAGOMI」シリーズは、持ち手が美しく滑らかで、「長く使えること」にこだわっています。装飾や接着剤を使用せずに、職人の目による品質管理が徹底されており、多くの工程が人手によって進められます。そのため、手間がかかるものの、製品の耐久性と美しさを確保しています。最近、日本製包丁の人気が高まり、海外からの需要も急増している中で、製造を増加したいと思っていた矢先、立ち上がったのがDX化でした。
「見える化」での工程管理
本格的なDX化は、製造部の社員の発案から始まりました。彼らは伝統的な製造方法に依存する中で、工程や在庫、進捗状況が見えづらかったことに課題を感じ、Excelとスプレッドシートを用いて改善に取り組みました。この過程で、製造途中の商品状況を一目で把握できるようになり、徐々に情報の「見える化」が実現しました。しかし、日報の管理などでは手書きからExcelへの移行が非効率的でした。
システム導入への決断
そのため、次のステップとして本格的な製造管理システムを導入することが検討されました。選択されたのは、スタートアップ企業の「株式会社Smart Craft」によるシステムで、これによりデータをリアルタイムで管理できるようになりました。月産数も1500本から2100本へと急上昇。何よりも大きかったのは、各作業者が自身の作業時間を把握できるようになったことです。これにより、それぞれの得意作業や苦手作業が明確になり、タスクの効率的な割り振りが可能になりました。
個々の成長を数字で測る
全員の業務データを集計し、月間レポートを通じて個人の成果を数値で確認できるようになり、モチベーションも高まりました。社員一人ひとりが自分の成長を実感できるため、全体的な作業効率も向上したのです。DX化によって実現した「品質を落とさず、量産する」姿勢は、今までの職人技を損なうことなく維持されました。
未来への展望
今後も、三星刃物ではさらなる自動化やプロセスの見直しに取り組む方針で、仕掛品の状況確認をスムーズに行えるよう改善を続ける計画です。また、原価計算の精度向上のために棚卸しの頻度を上げ、より多くのお客様により良い製品を供給できる体制を整えることを目指しています。
このように、三星刃物は職人技とDXを融合させ、未来へと舵を切っています。伝統を守りつつ、新たな挑戦を続けるその姿には、地域の誇りと技術革新への熱意が見え隠れしているのです。
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