久留米絣を守る坂田織物、300社の中小企業に選出される

久留米絣を未来へ紡ぐ坂田織物の挑戦

2023年度、日本の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定された坂田織物は、福岡県久留米市に位置する伝統的な久留米絣の製造者です。創業は昭和23年に遡り、当初は問屋に向けて久留米絣の生地や反物を卸すことから始まりました。今日では、坂田織物は商品企画にも力を入れ、久留米絣を用いたオリジナルファッションブランドを展開し、注目を集めています。

同社の企業ビジョンは「絣を身近にする」であり、商品ラインナップは新しいスタイルの絣を含む婦人服や雑貨まで幅広く、地域の観光資源と連携した体験型のファクトリーツアーやカフェによる絣テーマパークの設立を目指しています。また、久留米地域の絣産業を支えるために「絣サミット（仮）」の開催も企画中です。

「はばたく中小企業」とは？

「はばたく中小企業」は中小企業庁が選定する制度で、毎年新しいチャレンジに取り組む企業を広く紹介し、他の企業への励みとなることを目的としています。坂田織物の選出は、彼らの革新性と地域への貢献から評価された結果と言えるでしょう。

久留米絣製作の工程と課題

久留米絣の製作には30もの工程があり、特に「括り」と呼ばれる糸の柄を形作るプロセスは非常に重要です。この工程には多くの時間と労力がかかり、そのコストは製造原価の大部分を占めています。このため、絣産地には括りを専門に行う事業者が存在しましたが、現在久留米地域にはわずか1件の業者しか残っていません。この状況は地域の絣産業の存続を脅かすものです。

坂田織物は、福岡県工業技術支援センターと協力し、先端技術を導入した全自動の括り機を開発しました。この革新的な機械の導入により、絣の意匠性が向上し、より多彩な染色が可能となりました。これにより、製品ラインナップも豊富になり、久留米地域だけでなく、他の地域からの括り作業も請け負うことで、全体の供給を支える一方、自社の競争力を高めることにも成功しています。

結び

坂田織物の活動は、久留米絣を伝承しつつ、新しい市場を開拓して未来を模索する姿勢が評価されています。彼らの目的は、地域と連携しながら久留米絣をより多くの人々に知ってもらうことです。カフェを通じて食文化との結びつきを強化し、絣の魅力を新たな形で発信する挑戦は、他の中小企業にも刺激となることでしょう。坂田織物が日本の伝統工芸の未来を切り開く姿は、ますます注目を集めることでしょう。