新素材がもたらす和楽器の新たな可能性
日本の伝統楽器である筝において、象牙製の筝爪は高い音質を誇り、プロの演奏者たちに長年にわたり愛用されてきました。しかし、象牙の国際取引が禁止されて以来、代替品の必要性が高まっています。そこで、竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)を用いた新しい筝爪が開発され、音響測定を通じてその実力が証明されています。
象牙禁止がもたらす新たな課題
1990年以降、ワシントン条約の影響で象牙の国際取引が停止されています。さらに2016年には国内での象牙取引も禁止されるという勧告が出され、邦楽関係者の中には象牙の入手が難しくなることを懸念する声が上がっています。
そのため、プロの要求に応えるために、新素材による筝爪の開発が進められてきました。特に、海外在住の筝奏者には象牙製品を持ち込むことができないため、この新素材の需要は高まっています。
音質比較の結果
Sera Creationsは過去8年間にわたり、プロの演奏者や音響研究者の協力のもと、試作を繰り返して今回の音響比較を行いました。竹由来のCNFを利用した筝爪の音質を、従来の象牙製筝爪と比較しました。
音響を分析した結果、特に製品番号4(オレンジ色のグラフ)は象牙製の音質に非常に近いことがわかりました。このデータは新素材の音色性能を具体的に示すものであり、今後の和楽器市場における重要な指標となるでしょう。
「象牙を使わない箏コンサート」の開催
この新たな試みに賛同し、認定NPO法人野生生物保全論研究会は「象牙を使わない箏コンサート」を開催します。このコンサートは、新素材の箏爪の音色を一般に公開する場となります。三つの目的が掲げられており、第一は音質に関する新素材の提案、第二は象牙に対する価値観の転換、第三は象牙取引禁止を求める国と日本の伝統音楽の繋がりを再認識することです。
コンサートは2025年10月31日に東京ウィメンズプラザホールにて行われ、チケットは1,500円。親子室チケットは小学生以下が無料となります。
コンサート内容
このイベントでは、開場前に「生きもの地球ツアー」という音声プログラムの紹介や、象牙代替素材を使った和楽器の展示も行います。
講演では「ゾウの密猟と日本の象牙市場」や「アフリカのゾウを守る象牙代替の挑戦」についての話が行われ、続いて、竹由来の新素材で作られた筝爪を用いた演奏も予定されています。
まとめ
新素材の登場によって、和楽器の世界における象牙への依存が少しずつ薄れてきています。特にプロの筝奏者たちが新しい音色を楽しめる場が増えることは、邦楽の未来に明るい光をもたらすでしょう。今後もこのような取り組みが進むことで、さらなる革新が期待されます。