東京都写真美術館では、1995年の総合開館以来、写真と映像に特化した美術館としての役割を果たしてきました。2025年には、その30周年を迎えることになります。この重要な節目にあわせて、特別展「総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行」が開催されます。本展では、写真と映像の未来を探りつつ、過去の芸術表現にもしっかりと目を向け、観覧者に新たな視点を提供します。
展覧会は二期に分かれて行われ、第一期が「不易流行」と題され、2025年4月5日から6月22日まで、第二期は「トランスフィジカル」として7月3日から9月21日まで開催されます。特筆すべきは、7名の学芸員が共同で企画を進めたオムニバス形式の展覧会であることです。合計で10のテーマが設けられ、約38,000点に及ぶ収蔵の中から特に選りすぐりの作品が紹介される予定です。
本展の「不易流行」というタイトルは、江戸初期の俳人・松尾芭蕉に由来し、変わらない基本と新しい風を意識することの重要性を説いた言葉です。この心を大切にしつつ、過去の作品の魅力を伝えつつ現代の表現や潮流にも目を向けます。1860年代から現代までをカバーする五つのテーマで、当館のコレクションを深く掘り下げていきます。
特に見逃せないのは、赤瀬川原平の〈版画集 トマソン黙示録〉を初展示することです。彼は1980年代に町の片隅に存在する「トマソン」と名付けた無意味な造形物をユーモラスな視点で捉え、報告する活動をしました。この展示を通じて、彼の作品としての視点が新たに評価されることでしょう。
また、「過去と未来をつなぐ」ことをテーマにした連続対談も実施します。日本大学藝術学部の鈴木麻弓教授や東京藝術大学の古田亮教授が参加し、東京都写真美術館のコレクションについて深い考察が行われます。これにより、展覧会は更に深い学びの場ともなります。
さらに、今年初めての試みとして、「手話を交えたQ&Aショー」が企画されています。障害の有無に関係なく、多くの人が作品と向き合う素晴らしい機会となるでしょう。このプログラムでは耳の聞こえない鑑賞案内人が、出品作品や展示意図に関する質問を通じて、参加者と学芸員との関わりを深めます。
展覧会では、主に220点の出品が予定されています。これには、著名なアーティストの作品も含まれ、非常に多様な視点で写真と映像の分野に迫ります。特に、写真や映像に新たな光を当てる展覧会になっていますので、ぜひ一度訪れてみてください。会場は東京都写真美術館の3階展示室で、開館時間は午前10時から午後6時、木曜日と金曜日は午後8時までです。観覧料は一般700円ですが、小学生以下や都内の中学生、障害者手帳を持つ方とその介護者は無料です。
東京都写真美術館は、この30周年の特別な年にふさわしい展覧会を通じて、写真と映像の新たな魅力を発見し、未来への架け橋となることを目指しています。この機会をお見逃しなく!