未来の人材紹介を再構築する
東京大学松尾研究室が生み出したスタートアップBAKUTAN株式会社と、パーソルイノベーション株式会社がタッグを組み、エッセンシャルワーカー分野に特化した新たな人材紹介のマッチングアルゴリズムの共同研究に乗り出しました。この取り組みは、少子高齢化や社会インフラ支援分野における人材不足という深刻な問題に応えるための、新しい手法の開発を目指しています。
日本の人材不足の現状
日本では、少子高齢化が進行し、労働力人口が急速に減少しています。特に物流、介護、小売といったエッセンシャルワーカーが集まる分野では、人材不足が深刻です。多くの企業が採用に苦しむ中、早期離職によって求人企業と求職者の双方がコストと機会損失を被るケースが増えています。このような状況下では、人と企業を適切に結びつける高精度なマッチング技術が急務とされています。
新しいマッチングアルゴリズムの特徴
BAKUTANとパーソルイノベーションが開発するこの新たなアルゴリズムは、これまでの静的なマッチングから一歩進んで、動的な求人・求職者の情報を考慮に入れることを特徴としています。特に、キャリアアドバイザー(CA)が行う判断プロセスを反映したシステムであり、採用・不採用履歴や時系列情報を活用することで、より精密なマッチングを実現します。これは、求職者のキャリアジャーニーを追跡し、履歴を真剣に考慮に入れることで、生まれる情報の質が向上します。
従来方式の限界
従来の静的なマッチング手法は、特に外部労働市場においては多くの課題を抱えています。採用・不採用の決定が連続して発生する環境では、条件が常に変わり得るため、過去の静的データに依存するのは非効率です。この点に対処するため、両社はAIと経済学的なマーケットデザインの知見を融合させ、より柔軟かつ正確なマッチングを実現しようとしています。
研究の成果とその影響
今後、この動的マッチングアルゴリズムが実証実験を経て、実際の人材紹介サービスに導入される予定です。最終的には、紹介後の定着率やエンゲージメントなど、求職者のキャリアオーナーシップまでをカバーするソリューションの開発が期待されています。さらに、他の職種や地域へのスケールアウトも視野に入れており、今後の発展が非常に楽しみです。
パーソルイノベーションとBAKUTANの概要
パーソルイノベーションは、次世代の事業創造を目指して2019年に設立され、エッセンシャルワークに特化した人材紹介サービスを提供しています。一方、BAKUTANは「ミスマッチのない世界」を目指し、AIとマーケットデザインの知見を生かしたソリューションを開発する東京大学発のスタートアップです。両社の強みを活かした相乗効果は、今後の人材紹介業界において大きな影響をもたらすことでしょう。この研究が実を結ぶ日を心待ちにしています。