大林組の新たな熱中症対策システム『涼人』
近年、猛暑日が増加する中、建設現場の労働者が熱中症にかかるリスクが高まっています。株式会社大林組は、この課題に応えるべく、施工済みダクトを利用した新しい仮設空調システム『建設現場『涼人™(りょうじん)』プロジェクト』を立ち上げました。その目的と成果について詳しく解説します。
1. 成り立ちと背景
2025年に新たに施行される改正労働安全衛生規則では、職場における熱中症の防止が求められており、事業者には体制整備や手順作成が義務付けられています。特に夏場の建設現場は、外気から隔離された状態で日差しを強く受けるため、内部環境が高温多湿になりました。この環境の中、技能労働者は熱中症になりやすく、これまでの対策だけでは不十分です。
大林組は過去にもファン付き作業服や温度警告デバイスの導入などの取り組みを行ってきましたが、最近の気候変動を受け、より効果的な対策が必要と判断しました。
2. 『涼人』プロジェクトの特徴
(1) 仕組みと運用
『涼人』プロジェクトでは、地上に設置された大型の仮設空調機と施工済みのダクトを接続し、各階へ冷風を供給します。電動ダンパーを用いて冷風の供給エリアを調整することで、作業の進行に合わせて効率的に空調を行うことができます。今回試験的に導入したオフィスビルの新築工事では、4台の仮設空調機が稼働し、大規模な建物でも対応可能な設計となっています。
(2) 期待される効果
大林組の基準では、WBGT値が25以上あるいは気温が31℃以上の場合、作業時間を制限し休憩を義務付けています。『涼人』プロジェクトでは、作業エリアの温度を28℃程度に保つことを目指しており、これにより熱中症のリスクを低減します。さらに、猛暑日でも通常の休憩頻度での作業を可能にし、作業効率の向上にも寄与します。
3. 今後の展望
今後、大林組ではこの『涼人』プロジェクトを基本設計段階に組み込むことで、発注者との理解を深めながら、夏場の工事での導入を進めていく予定です。また、順次対応現場を増やし、さらなる労働環境の改善を目指していくとのことです。
まとめ
『涼人』プロジェクトは、建設現場での熱中症対策の画期的な取り組みとして期待されています。大林組は安全で快適な作業環境を提供し、これからも熱中症防止に全力で取り組んでいくことでしょう。今後の成果が非常に楽しみです。