AIとヘルスデータを駆使した新たなアプローチ
最近、株式会社JMDC、オムロン株式会社、そして国立大学法人筑波大学が共同で、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを高精度で予測するAIモデルの開発を完了しました。この取り組みは、年々増加する睡眠時無呼吸症候群の患者数に対応するため、医療データや個々の健康記録を統合して行ったものです。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは
SASは、睡眠中に呼吸が止まる、または呼吸が浅くなる病気で、放置すると高血圧や心疾患など深刻な健康問題を引き起こすことが知られています。日本国内では約940万人がそのリスクを抱えているとされる一方で、治療を受けている患者はわずか64万人程度とされています。これは、多くの患者が無自覚のまま放置されていることを示しています。
研究の背景と目的
この研究の目的は、「隠れSAS」と呼ばれる未診断の患者を見つけ出し、適切な検査と治療に繋げることです。それを実現するために、従来のアプローチ(医療機関での精密検査やウェアラブルデバイスを使った診断)に代わる新たな手法が必要とされる中、このAIモデルの開発が進められました。
使用したデータと開発プロセス
研究には約186万人のPep Upユーザーから集まった診療報酬明細書データや健康診断のデータを利用し、さらに日々のライフログデータ(家庭血圧、体重、睡眠時間、歩数など)を組み合わせています。使用した機械学習手法はLightGBMで、279のデータ項目から睡眠時無呼吸症候群を予測します。
特に注目すべきは、通常の健康診断のデータだけでなく、日常的な健康データも評価に組み込むことで、予測精度を高めた点です。研究チームは、データの量と質の両方から向上させる取り組みを行いました。
予測モデルの成果と精度
開発したAIモデルは、実際に治療を受けているSAS患者を高精度で予測することができると確認されました。具体的には、予測性能を示す指標AUROCが0.898という結果も出ています。これにより、特に高リスクとされた層を短期間で抽出する効率が大幅に向上したと言えます。
今後の展望
今後、本研究の成果を基に、普段の健康管理の中で「隠れSAS」を早期に発見するシステムが期待されます。その結果、SASリスクが高いとされた場合には、精密検査を推薦し、さらに早期治療に繋げることで健康寿命を延ばすことが可能になります。また、企業においては、未治療のSASが引き起こす生産性の低下を防ぐための大きな助けにもなります。
共同研究者のコメント
筑波大学の岩上教授は、「このモデルによって、特別な検査をしなくても、既存の健康診断データやライフログからリスクの高い方を見つけることができるようになる」と述べています。また、オムロンの意欲的な取り組みもあり、健康管理と予防医療の新たな時代が到来することが期待されています。
このように、医療ビッグデータとAIの融合によって、SASの予測と治療への取り組みがなされていくことで、より多くの患者の健康を守るための道筋が開けています。