日本の未来を支える森林循環経済の推進に向けて
近年、環境意識の高まりと持続可能な社会の実現を目指す動きが各所で見られています。その一環として、一般社団法人プラチナ構想ネットワークは、2023年5月に「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」を掲げ、2024年7月には推進戦略を公表しました。これらの取り組みは、森林資源を活用し、地域経済の活性化を図るものです。
森林資源フル活用事業モデルプランの提案
プラチナ森林産業イニシアティブの一環として、森林資源を最大限に生かすための新たなビジネスモデルが提案されています。このモデルでは、臨海部の製紙工場における余剰パルプを利用したバイオリファイナリーの取り組みを通じて、地方の分散型モデルを模索しています。具体的には、250ヘクタールの森林から年間で10万立方メートルの木材を伐採し、製材工場でチップや粗ラミナを生成。その後、チップはエタノール製造に向けて糖化されます。
このプロセスにより、化石燃料の利用を大幅に削減し、経済効果を生み出すことが見込まれています。一方でバイオエタノールのコストは市場価格の3倍に達するため、価格ギャップの解消が大きな課題として浮上しています。
グリーンケミカルの実装
廃プラスチックやバイオマスを活用したリサイクルは既に進行中で、森林資源を駆使した化成品製造にも取り組まれていますが、実用化にはさらなる努力が必要です。事業モデルの見直しや林業との連携を強化することで、グリーンケミカル市場の形成へ向けた基盤を築くことが求められます。これには、技術革新やコストの削減が不可欠です。
木造都市の形成
最近の動きとして、国土交通省のガイドラインに沿って、木造建築物の普及が進められています。単体の建築物だけでなく、街区全体の木造化を目指すことが今後推進され、様々なステークホルダーとの連携が不可欠です。木造都市の形成に向けて、地域の特色を生かした案件が今後期待されるところです。
具体的林業プロジェクトの実践
国内では、産官学民が連携し、さまざまな森林・林業プロジェクトが進行中です。これを受け、工業用のG空間情報技術などを活用した新たな事業モデルが形成されつつあります。さらなる造林活動の拡大や、異業種企業との連携による資金供給が進めば、持続可能な森林管理が実現するでしょう。
提言: 地方創生とGX戦略
森林循環経済は、地方経済の活性化と共に、GX(グリーントランスフォーメーション)戦略にも直結します。日本には豊富な森林資源が存在するため、これを最大限に活用することで、長期的なCO₂吸収や環境保護に貢献できます。特に木造建築やグリーンケミカルへの利活用が重要です。
地方創生やGX戦略の一環として、森林資源のフル活用事業を強化することを求めます。具体的には、森林資源活用事業モデル制度の創設や省庁連携による施策を推進し、国の重要政策として位置づけるべきです。
進行中のプロジェクト
全国各地で進む森林資源活用プロジェクトとして、バイオマス化学の実用化へ向けた取り組みや、木質資源と廃プラスチックを利用した新たな事業化検討が進展中です。大手建設会社も林業分野へ参入し、効率的な森林活用が加速されつつあります。
このような取り組みを通じて、日本の森林資源の循環を促進し、持続可能な社会の実現へとつなげていきたいと思います。