日本経済の変遷と物価情勢を振り返る：25年の分析

序文

1990年代から2020年代にかけて、日本経済は大きな変遷を経てきました。本稿では、この25年を振り返り、先行研究や企業のアンケートをもとに、経済と物価情勢の変化を整理します。

1990年代の経済低迷

1990年代には、日本経済は深刻な低迷に直面しました。需要と供給の両側からの要因が影響し、緩やかなデフレに陥ったのがこの時期です。この背景には、名目金利の下限制約があり、金融政策の自由度が大幅に制限されていました。当時、政府は様々な経済対策を講じましたが、根本的な回復には至りませんでした。

2010年代に入ってからの景気回復

その後、2010年代に入ると、量的・質的金融緩和の導入により景気は回復を見せ、デフレからは脱却しました。しかし、物価や賃金の上昇が難しい状況は依然として続いており、2％の「物価安定の目標」は遠く見える状態が続きました。このような状況の中で、企業や社会全体には、賃金と物価が容易に上がらないという慣行や考え方が染みついていました。

新型コロナウイルスとその後の影響

2020年には新型コロナウイルスの影響が経済に新たな打撃を与えました。この危機の中で、世界的な供給網の混乱や需要の変化が見られました。しかし、コロナ危機を経たことで、輸入物価が急騰し、労働需給も引き締まる状況が見られるようになりました。その結果、賃金と物価の好循環が強まりつつあることは、経済復興への期待を持たせる要因となっています。

現在と未来への兆し

近年においては、国際的な経済環境や労働市場、企業の価格設定行動に変化の兆しが見られており、これまで固着していた賃金や物価の上昇が期待される状況に変わりつつあります。特に、労働市場の改善が賃金上昇を促進し、それに伴って物価の安定も実現する可能性が高まっています。これにより、2％の「物価安定の目標」の持続的で安定した実現が視野に入ってきました。