博士課程進学者の就職活動に関する実態調査
レバテック株式会社が実施した調査では、博士課程の進学者が抱える就職活動の課題について明らかになった。調査対象は民間企業で働く博士人材212名と、博士人材の採用を行う企業の担当者192名。そこから見えてきた現状は、厳しい就職市場と進学後の不安定なキャリア形成の実態だ。
1. 博士進学の実感と就職の現状
調査によると、約7割の博士人材が「進学して良かった」と感じているものの、同時に「就職先が見つからなかった」という課題も浮き彫りとなった。特に、博士課程に進学した理由で最も多かったのは「研究が好きだから」であり、専門性を深めたり、分析的思考力を高めたりしたことを評価する声が多い。
ただし、半数以上は就職先の不安を抱え、専門知識を仕事に活かせなかったと回答した。これは、博士課程の進学がキャリア形成に必ずしも直結しないことを示唆している。専門分野の知識やスキルが豊富であるにも関わらず、実際に活用できる場が限られているのが現状だ。
2. 企業が求める人材
企業が博士学生を採用する上で重視する点については、最も重要視されているのは「論理的思考力」であり、続いて「研究内容が自社で活かせるか」という観点だ。これは、専門知識だけでなく、柔軟な思考や問題解決能力を求める企業の姿勢を示している。
経済産業省は、博士人材が研究に関する専門性だけでなく、様々な分野で活躍するための意識を持つことが必要であると指摘しており、博士学生自身がポータブルスキルを積極的に探索することが奨励されている。したがって、自身の専門以外の職種や業界も考えることがキャリアに有益だと言える。
3. 応募経路とマッチングの傾向
博士学生の応募経路に関しては、最も多いのが「研究室や教授の紹介」で、現在の就職活動では民間サービスがほとんど活用されていないという調査結果が出ている。これにより、研究分野に関連するマッチングはある程度存在している一方で、その他の分野でのマッチングが不足していることが指摘されている。
このため、学生がより多くの企業に接触できるようなエージェントサービスの活用が重要であり、そうすることで募集の幅を広げることが可能になる。事実、企業がインターンシップを通じた学生との接点作りを行うことが重要な要素である。
4. ジョブ型採用の実施状況
博士人材を採用する企業のうち、約6割が博士学生に対してジョブ型採用を導入していると回答。ただし、約25%の企業は未導入であり、博士学生向けのインターンシップの実施に関しても、採用担当者の約半数は実施していないとのことだ。
経団連は、博士人材の適切な処遇とインターンシップの重要性を強調しており、より多くの企業がこうした取り組みを促進する必要がある。適切なマッチングを実現するためには、ジョブ型採用やインターンシップの積極的な採用が求められ続ける。
5. 結論と展望
調査の結果、博士課程進学者の約7割が「進学して良かった」と答えつつも、就職活動の厳しさに直面していることが明らかになった。企業と学生が互いに圧力を感じないような新たなマッチングの形を探ることが、今後の成功に繋がるだろう。レバテックでは、博士生が広範なスキルを持つことを前提に、その活躍の場を広げるために支援していく方針だ。企業側との協力を見直しつつ、双方が満足する環境を整えることが重要である。