AI技術を活用した下水処理場運転支援の革新
近年、下水道事業における技術の革新が求められています。それに応える形で、2021年度から国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)の委託を受け、株式会社NJSや広島県、千葉県の市町の共同体が実施している「B-DASHプロジェクト」が進行中です。このプロジェクトでは、下水処理場の運転操作をAIで支援する新たな技術の実証が行われ、その結果がついに国総研のガイドラインとしてまとめられました。2023年7月25日にこのガイドラインが公開されたことは、業界にとって大きな進展を意味します。
下水処理と技術力不足の課題
下水処理場の運営には、熟練した技術者が必要不可欠ですが、少子高齢化の影響による熟練技術者の減少が問題視されています。これにより、運転操作に必要な技術力が不足してしまう危険性があります。B-DASHプロジェクトはこの問題を解決するために、AIを活用して熟練技術者の知識と経験を次世代に引き継ぐ仕組みを構築しました。
AIによる判断・処理水質の安定化
具体的には、AIが操作履歴や水質分析、処理状況に関する画像などのデータを基に、リアルタイムで下水処理場の運転操作に関する判断を提示します。これにより、経験豊富な技術者と同等な判断が可能となり、運転操作の効率化が図れます。技術の見える化は、若手技術者の育成にも寄与することでしょう。
経済性とサステイナビリティの両立
この技術の導入により、下水処理場が抱えるコスト問題にも対処可能になります。良好な処理水質を維持しつつ、使用する電力や薬品の量を減らすことが見込まれています。これにより、経済的な負担を軽減し、持続可能な運営が実現できるでしょう。
未来に向けた更なる取り組み
今後、NJSをはじめとする関係団体は、AI活用によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を通じて、老朽化したインフラの維持管理や、災害対策等に関する課題に取り組み、サステナビリティの向上を目指していく方針です。具体的な技術を全国に展開し、下水道事業が抱える課題を根本から解決していくことが期待されています。
一方で、B-DASHプロジェクトにおける実証実験の成果を新たな基準として業界全体に展開し、他の地域や国でもその技術が広まることを望む声も多いです。AI技術がもたらす未来に期待が寄せられる中、下水処理の効率化と持続可能な運営が進むことが期待されます。