エルメス財団と金属の魔法
2025年の秋、エルメス財団は待望の書籍『Savoir & Faire 金属』を岩波書店から発行します。本書は、自然素材に関する職人技や手わざを再考するプログラム「スキル・アカデミー」の一環として、2021年の『木』、2023年の『土』に続く第3弾となります。
この書籍は、フランス語版『Savoir & Faire le métal』の内容を基に、日本語版にオリジナルの専門家やアーティストによる論考やインタビューを加えたものです。金属に関する深い知識と豊かな視点を持つ内容となっており、金属をテーマにしたアートや技術に興味のある読者にとっては必見の一冊となることでしょう。
展覧会「メタル」の開催
書籍の出版を記念して、銀座メゾンエルメス ル・フォーラムで、金属の特性を考えるグループ展「メタル」が開催されます。この展覧会では、金属が人類の文明と共に歩んできた歴史を振り返り、青銅器時代から現在までの金属の多様性が探求されます。展示される素材は、金、銀、鉄、鉛、真鍮など多岐にわたり、金属の特有の性質や加工技術の面からも議論されます。
展覧会のキュレーションを手がけるユーグ・ジャケ氏は、「金属の特徴はその両義性にある」と述べています。この両義性は、金属の物理的な性質に加え、鉱石から金属を取り出し加工する過程が持つ文化的な側面を反映していると言います。火を操る技術が神話や魔術と結びつき、金属の加工の際の音や姿が、我々の記憶に深く根付いていることを思い起こさせます。
アーティストたちの視点
「メタル」展には、3名のアーティストが参加しています。まず、エロディ・ルスール氏は、メタル音楽を記号論的に解釈し、彼女自身の創作を音楽や他の芸術分野と絡めて展開します。次に、映画監督の遠藤麻衣子氏は、日本古来の朱と水銀を用い、内的宇宙と外的象徴を探求する映像作品を展示します。
さらに、榎忠氏は、鉄球を舞台に人間活動の記録を行いながら、廃材を使って新たな作品を創造しています。これらのアーティストたちは、それぞれ異なる視点から金属の歴史や意味を再考しており、観客に新たな発見を提供しているのです。
書籍『Savoir & Faire 金属』の内容
本書は、メタルの歴史やその特性に迫り、金属が持つ美術や文化の幅広い側面を探究しています。章立ては「抽出と変化」「金属/メタルの芸術」「金属の建築」となっており、多様な専門家による寄稿が掲載されています。歴史的な視点から現代のアートまで、金属の魅力を多角的に紹介する内容です。
最後に
エルメス財団の展覧会「メタル」と書籍『Savoir & Faire 金属』は、金属が持つ人類の技術に対する深い理解と魅力を引き出す良い機会となるでしょう。多くの方々が金属の特性を再発見し、その奥深い魅力に触れることを期待しています。展覧会の詳細や入場方法については、公式ページでご確認ください。