オーナーシップ・ワークス、日本進出の背景
米国の非営利団体、オーナーシップ・ワークスが日本に初の海外拠点「オーナーシップ・ワークス・ジャパン」を設立したことが、2025年10月20日に発表されました。この拠点は、従業員が職場で資産形成の機会を持ち、オーナーとしての誇りを持てる社会の実現を目指す取り組みであり、世界での従業員オーナーシップの拡大を促進する第一歩となります。
オーナーシップ・ワークスは、これまでに167社で25万人以上の従業員に対して、制度の導入を支援し、約13億米ドル相当の資産を提供してきました。新しいプログラムの導入により、さらに100億米ドルが分配される見通しとなっています。この取り組みは、日本における経済の成長と安定を促進し、より多くの人々がオーナーシップの恩恵を享受することを目指しています。
日本における資産形成の必要性
オーナーシップ・ワークス・ジャパンの設立は、日本の労働市場に新たな風をもたらすでしょう。日本では、最近の経済情勢や政府の政策が、資産形成に対する関心を高めています。特に、企業の成長を促しつつ、投資家や家計に利益を還元することが求められる中で、職場における働き方の革新が期待されています。
オーナーシップ・ワークスの創設者兼理事長のピート・スタブロスは、日本の「カイゼン」の文化に触れ、オーナーシップは「資本のカイゼン」であり、従業員と企業の結びつきを強化する仕組みであると述べています。これは、日本の長い企業文化を考慮した上での新しい試みであり、従業員の主体性を尊重する日本にとって、最適な場所だとしています。
行政の支援と民間の取り組み
設立の発表に際して、イベントでは衆議院議員で資産運用立国議員連盟事務局長の小林史明氏が基調講演を行いました。小林氏は、企業の成長を地域社会や家計に還元する「成長と分配の好循環」の重要性を強調し、従業員がオーナーとして企業価値の向上に寄与する仕組み作りが、日本経済の持続的成長に不可欠であると訴えました。
また、金融庁の堀本善雄局長も登壇し、資産運用立国の実現に向けた金融庁の取り組みを紹介しました。これらのサポート体制により、オーナーシップ・ワークスは日本国内でのプログラム導入が効果的に進められる見込みです。
経済のエンゲージメントと課題
ギャラップ社の報告によると、日本の従業員の職場へのエンゲージメントはわずか7%とされ、これにより日本経済全体では年間約90兆円もの損失が生じていると推算されています。この現状は、多くの企業が抱える「高い忠誠心」と「低いエンゲージメント」という矛盾を浮き彫りにしています。
オーナーシップ・ワークスのプログラムが成功すれば、従業員は企業の成果をより実感し、自らの努力が評価される環境が整います。こうした仕組みは、日本の従業員が直面する経済的不安を軽減し、持続可能な発展を促進できる可能性を秘めています。
日本企業の先駆的な例
既に日本では、いくつかの企業が従業員オーナーシップを導入し、業績向上を図っています。医薬品受託製造を手がける武州製薬株式会社や、会計ソフト提供の弥生株式会社などがその一例です。これらの企業は、従業員を対象にしたオーナーシップ・プログラムを導入し、経済的な安定を確保する新たな試みを行っています。
オーナーシップ・ワークス・ジャパンの理事長である平野博文氏は、オーナーシップ文化が日本社会にもたらす変化に期待を寄せています。すべての従業員が自身の努力によって生み出す価値を享受できる仕組みが確立されれば、それがさらに企業や地域経済の成長につながると考えられています。
グローバルな動きとしての広がり
オーナーシップ・ワークスは2022年に米国で設立され、既に60以上のパートナーの支援を受けて活動を展開しています。その後、100以上のパートナーの参加を得て、その理念が世界中に広がっています。東京での拠点設立は、そのグローバル運動に寄与する重要なステップです。
アンナ・リサ・ミラーエグゼクティブ・ディレクターは、オーナーシップ・ワークスが成長を続けていることを強調し、すべての従業員が職場で資産形成の機会を持てる社会の実現に向けた重要な一歩であると述べています。
オーナーシップ・ワークス・ジャパンは、これからも多くの企業や投資家と連携し、全従業員が恩恵を受けられる社会創りに向けて力を尽くしていきます。