7月に、認定特定非営利活動法人市民福祉団体全国協議会が主催する2025年総会記念講演が行われ、介護系の事業者や市民協友誼団体が参加しました。この講演では、「地域共生社会の実現に向けて」というテーマが掲げられ、介護の現状と未来に向けた取り組みが議論されました。
講演には、厚生労働省の老健局 認知症施策・地域介護推進課の吉田慎課長が登壇し、急速な高齢化社会の現状とそれに対する政府の取り組みについて説明しました。日本では2025年には65歳以上の人口が3663万人に達し、特に高齢者が急激に増加する見込みです。このため要介護認定者も増えることが予想され、介護給付費は10兆円を超えるとされています。これに対抗する一方で、介護を支える現役世代の減少が課題となり、医療や介護従事者の不足も深刻です。
特に地域によってその高齢化の進行にバラツキがあり、大都市では高齢者の増加が顕著であるのに対し、地方では逆に高齢者が減少しているという多面的な課題があります。
次に吉田課長は、認知症施策の推進について語りました。「誰もが認知症になり得る社会」の実現を目指し、認知症基本法を策定し、当事者の声を施策に反映しています。新しい施策では、認知症の診断を受けた後も「できること」を重視し、本人の希望に沿った生活が送れるような環境づくりが進められています。これには、バリアフリー化や社会参加促進、権利支援、医療と福祉サービスの充実が含まれます。また、認知症に優しい商品開発やピアサポートの進展も大切で、地域全体での支え合いを促しています。
さらに、身寄りのない高齢者向けの終身サポートが重要視されています。具体的には、保証人や通院の付き添い、財産管理、死後事務など、多岐にわたるニーズに対し、NPOや民間企業が支持していますが、料金の複雑性やトラブルが発生しています。そこで、政府はガイドラインの策定を通じてサービスの質を高めようとしています。
地域包括ケアシステムの進化についても触れられました。2025年を目指した全国展開から、2040年に向けた適応的なサービス提供が求められます。特に介護人材の確保や職場環境の改善に取り組みつつ、地域に根差した介護がどのように行われるのかが課題です。
参加者からは高齢者支援に関する提言が数多く寄せられました。介護保険外サービスの柔軟な活用や介護事業者の地域コミュニティ活性化についての提案が多く、これからの介護がどのように続いていくのか、希望に満ちた議論が交わされました。
今後も市民福祉団体全国協議会がさまざまな施策を通じて地域社会の福祉の向上に貢献していくことが期待されます。その中で、参加者の代弁となるような施策が進んでいくことが望まれます。