老朽ビル再生で街の価値向上！眺望を生かした特別なオフィスビル誕生

東京都中野区にある築50年のSRC造11階建てオフィスビル。老朽化に加え、法令違反状態や耐震性の問題を抱えていましたが、株式会社東京アセットソリューションと株式会社再生建築研究所の手によって、見事な再生を果たしました。

このビルは、青梅街道沿いに位置し、北側には美しい銀杏並木、南側には住宅地が広がる抜群のロケーションです。しかし、既存不適格ビルだったため、建て替えは経済的に非現実的でした。そこで、再生による価値向上という大胆な挑戦がスタートしました。

再生への道のり：課題克服と創造性

再生プロジェクトは、いくつかの大きな課題に直面しました。まず、法令違反状態の是正。増改築により積み重ねられた違反部分を解消するため、容積率超過分の面積を減築。南北の外壁をセットバックし、バルコニーを新設・拡張することで、眺望を活かしたユニークな空間を生み出しました。

さらに、青梅街道に面した旧耐震基準の建物だったため、耐震補強工事も必須でした。中野区の助成金も活用し、柱や壁の補強、避難経路の改善など、安全性の向上に力を注ぎました。その結果、耐震基準適合証明書と構造評定評価書を取得しています。

新たな価値の創造：共用ラウンジと多様なテナント

再生されたビルは、単なるオフィスビルではありません。最上階には、入居テナントが自由に利用できる共用ラウンジを設けました。集中作業用のデスク、打ち合わせに最適なラウンドテーブル、会議室、そして開放的なバルコニーと、多様なニーズに対応できる空間です。ビルの最大の魅力である眺望を共有することで、建物全体の価値を高めることに成功しています。

1階には、既存のパティスリーに加え、チョコレートショップとシミュレーションゴルフを誘致。街の顔となる部分に活気をもたらし、周辺環境の活性化にも貢献しています。2階から10階は、4坪から39坪までさまざまなサイズの賃貸オフィスとし、スモールオフィス需要に対応。バルコニーを巧みに配置することで、各フロアの使い勝手を向上させています。

テナントとの協調と地域への貢献

再生プロジェクトは、既存テナントとの協力があってこそ実現しました。計画の説明、理解を得るための丁寧なコミュニケーション、移転作業への支援など、関係各所との信頼関係を築くことで、工事期間中のテナントへの影響を最小限に抑えました。工事後には、既存テナントの一部が戻ってきてくれたことは、このプロジェクトの成功を象徴する出来事と言えるでしょう。

このプロジェクトが示したもの

このオフィスビル再生プロジェクトは、単なる建物の改修ではありません。老朽化したビルを再生し、街の活性化に貢献した成功事例です。既存不適格ビルという課題を克服し、眺望を最大限に活かした特別な空間を創造。テナントとの協調、地域貢献を両立させた点も高く評価できます。この取り組みは、都市におけるストック活用の可能性を示す、重要な事例と言えるでしょう。