長崎県の新しい養殖への挑戦
長崎県にある昌陽水産が、新たな養殖の試みとして、高温耐性サクラマスの試験養殖を開始しました。これは、日本の気候変動への適応策としても注目されているプロジェクトです。2024年12月24日からの開始予定で、養殖数は約3,000尾。出荷は2025年の春を見込んでいます。この取り組みは、長崎市と十八親和銀行が連携して推進する「NAGASAKI CHALLENGE PLUS」によって実現したものです。巷で話題のこのプロジェクトが、地域の経済や環境に与える影響について深掘りしていきます。
養殖環境の課題を乗り越えて
昌陽水産は、トラフグ、シマアジ、マダイといった魚種の養殖を行っていますが、近年、赤潮による影響に直面しています。2023年6月には赤潮が発生し、養殖魚の大量死が報告され、被害総額は11億円にも達しました。これにより、冬から春にかけて赤潮のリスクが低い新たな魚種を導入する必要がありました。
そこで出会ったのが、高温耐性サクラマスを開発している株式会社Smoltです。同社は、気温が高い九州地域でのサーモン養殖の可能性を模索し、選抜育種により高水温でも育成できる系統を確立しています。この協力により、長崎県の養殖業に新たな風を吹き込むことが期待されています。
Smoltの技術と成果
株式会社Smoltは、2019年に創業した若い企業です。宮崎県という、一般的にはサーモン養殖に不向きとされる地域で、海面養殖に挑戦し続けてきました。彼らは、20℃前後の厳しい環境でも育成可能なサクラマスの系統を研究開発してきました。この成功により、九州はもちろん、四国や本州でも実績を上げています。異常気象が常態化する中、高温耐性の魚を養殖する技術は、環境に適応した養殖を実現する上で必要不可欠と言えるでしょう。
昌陽水産の取り組み
昌陽水産は、長崎市にてトラフグやシマアジなどを養殖する中で、高品質な魚を顧客に提供することに力を入れています。「ゆうこうシマアジ」といった、地域特有の飼料を活用した魚の生産は、業界でも評価されており、将来的には新たな魚種の追加も視野に入れています。昌陽水産の若手スタッフが積極的に新プロジェクトに取り組む姿勢も、地域経済の活性化につながっています。
NAGASAKI CHALLENGE PLUS
このプロジェクトの背景には、「NAGASAKI CHALLENGE PLUS」という地域創生プログラムがあります。地元企業だけでなく、県外からの事業者、U/Iターン希望者、学生など、あらゆる参加者が集まりオープンイノベーションを通じた新たなビジネスの創出を目指しています。このプログラムは、長崎の未来に貢献する新たなアイデアや事業を生み出す場として機能しています。今後もこの取り組みから新しいビジネスが誕生することを期待しています。
最後に
長崎県の高温耐性サクラマスの試験養殖は、地域の養殖業の未来を切り拓く重要な一歩です。地域の特性を生かした新しい養殖モデルがどのように確立され、成功に導かれるのか、今後の展開から目が離せません。このプロジェクトが、他の地域にも波及し、持続可能な水産業が広がっていくことを願っています。