従業員エンゲージメントと投資指標の関係性
2024年データ分析の結果を発表
株式会社リンクアンドモチベーションが運営するモチベーションエンジニアリング研究所は、従業員エンゲージメントと投資指標の関連性に関する調査結果を2024年に基づき公開しました。この調査は、上場企業における人的資本情報の重要性が高まる中で、企業価値に与える影響を明らかにすることを目的としています。
調査の背景と目的
昨今、人的資本開示の義務化が進むなか、企業価値を向上させるためにエンゲージメントの公開が求められるようになっています。特に東京証券取引所は、企業に対し人的資本への投資に注目し、改善策の実行を促しています。しかし、依然として人的資本が企業価値に及ぼす影響を示す研究は限られているため、この調査が果たす役割は非常に重要です。また、調査は継続的に実施され、2025年にはさらにデータが更新される予定です。
調査概要
本調査は、2024年に実施された従業員エンゲージメントサーベイに基づいており、対象となったのは東証スタンダード・プライム上場企業104社でした。前回の調査から対象社数が増加し、企業のエンゲージメントに対する関心の高まりが示されています。
また、調査分析には、エンゲージメントスコア(ES)を用い、その数値をもとに各企業のエンゲージメント・レーティング(ER)を評価。加えて、投資指標の「ROE」「ROIC」「PBR」などと比較することで、エンゲージメントが企業パフォーマンスに与える影響を定量的に探っています。
調査結果
調査の結果、以下のことが明らかになりました:
- - 企業の関心の高まり:調査対象企業は76社から104社に増加。
- - 相関関係の確認:ESとROE、ROICとの間に弱い正の相関が見られ、高いESを持つ企業はROEやROICも若干高いことが規定されています。
- - ランクごとの差異:ERがDランクの企業とAランクの企業では、ROEに約5ポイント、ROICに約6ポイントの差が見られました。
- - PBRの観点:ESが高い企業ではPBRも高く、ERがDランクの企業はPBRが1割れであるのに対し、AやBランクの企業ではPBRが1を超える割合が5割を上回っています。
今後の課題
この調査結果は、ESが投資指標に与える影響に関する数値的な恩恵を示していますが、業界やビジネスモデル、さらには市場のトレンドによって指標が影響を受けることから、明確な因果関係を立証するにはさらなる研究が必要です。とはいえ、企業価値の向上に向けたエンゲージメントへの取り組みが重要であることは間違いなく、多くの企業がKPIとしてエンゲージメントを設定しています。
今後も企業は人的資本の可視化を進め、エンゲージメントの向上に注力していくべきでしょう。
まとめ
リンクアンドモチベーションの調査は、企業にとってエンゲージメントがどれほど重要な要素であるかを再確認させる結果をもたらしました。人材の持つ力を活かし、企業の未来の成長へ結びつけるための戦略的なアプローチが求められています。