次世代の生体センシングを実現する2µm赤外線レーザーが発振に成功
旭化成エレクトロニクス株式会社と京都大学高等研究院のグループが、2µm帯赤外線フォトニック結晶レーザー(PCSEL)の発振に成功したというニュースが飛び込んできました。このPCSELは、従来のレーザーとは一線を画す小型で高性能な半導体レーザーです。これにより、生体内物質の非侵襲センシングやがんリスクの研究など、これまで実現が困難であった応用分野への道が開かれることが期待されています。
1. 研究の背景と進展
旭化成エレクトロニクスは1980年からホール素子の量産を行い、化合物半導体技術を駆使してさまざまなセンサーを開発してきました。特に、分子線エピタキシー(MBE)による薄膜形成技術を用い、高輝度・狭帯域の赤外線レーザーへの需要に応えてきました。これまで赤外線LEDでは対応が難しかった医療や呼気分析の分野において、小型で量産しやすい赤外線レーザーの開発が求められています。
京都大学の野田教授によるPCSELは、フォトニック結晶の特性を生かし、従来のレーザーよりも小型かつ高輝度、高指向性を実現しました。この技術により、従来の制限を克服し、幅広い応用領域への展開が可能になります。
2. 想定される応用領域
・
医療・ヘルスケア分野: 2µm帯のレーザーを用いることで、ウェアラブルデバイスによる生体内物質の非侵襲的なセンシングが期待されます。また、呼気に含まれる有害ガスの成分(VOCsやアセトンなど)の検知を通じて、健康モニタリングが大幅に向上する見込みです。
・
環境モニタリング: 2µm帯には二酸化炭素(CO₂)やメタン(CH₄)の吸収帯が存在します。このPCSELの特性を活用することで、温室効果ガスの微量測定が可能になるため、環境保護の観点からも注目が集まります。
・
通信・LiDAR分野: 2µm帯赤外線は目に優しい波長帯とされ、安全性の観点からも重視されています。これを基に、高性能なLiDAR(光検出および距離測定)や次世代通信技術への応用が期待されます。
3. 今後の展望
旭化成エレクトロニクスは、この技術成果を基に2µm帯PCSELの研究開発を加速させる方針です。さらなるフォトニック結晶構造の最適化を行い、高指向性・狭帯域・高輝度なレーザーの実現を目指します。また、実用化に向けた量産性の検証も進め、ヘルスケアや環境モニタリング、先進的な通信技術などへの応用を図っていく掛かりの計画が進行中です。
これらの取り組みは、次世代センシング技術の進展に大きく寄与することが期待され、最先端技術の発展に大きな影響を与えるでしょう。
本研究結果は2026年3月の応用物理学会で発表される予定です。