嫌いな親にどう向き合うか?
親子の絆や介護は、しばしば複雑な感情が絡み合います。特に、親との関係が良好でない場合、介護は果てしないストレス源となることがあります。そんなテーマを扱ったコミック『余命300日の毒親』が株式会社KADOKAWAから発売されました。この作品は、著者である枇杷かな子さんが自身の介護体験を基に描いたセミフィクションです。
作品の概要とあらすじ
このコミックは、父親ががんで余命1年と宣告された娘、ヒトミの物語です。過去に父から暴力を受けていたため、ヒトミは父の介護からできるだけ逃れようと心に決めます。しかし、要介護認定が容易にはおりず、他に頼れる親族のいない彼女は、否応なく父の世話に関わることになってしまいます。厳しい状況下で、仕事や家事、育児と介護の両立を強いられるヒトミは、次第に心と体の余裕を失っていくのです。
果たして残された時間の中で、親子は歩み寄ることができるのか?その問いに対する答えが物語の中で徐々に明かされていきます。作者の生の経験が生きたこの作品は、介護に関する辛さや、またそこから見出した人間関係の新たな一面を描いています。
介護の現実とその描写
『余命300日の毒親』では、ヒトミの内面的な葛藤だけでなく、介護の現実的な側面も描かれています。たとえば、介護保険制度の難しさや、現実に介護を行う中での法的・財政的な問題。それに加え、ヒトミが直面する感情的な負担は、読者が共感できるように丁寧に描写されています。この作品を読むことで、多くの人々が抱える「介護」というテーマに対する理解が深まることでしょう。
著者プロフィール
枇杷かな子さんは、温かみのある繊細な作風で知られるマンガ家でありイラストレーターです。これまでに『アゴが出ている私が彼氏に救われるまで』や『ただいま。おばあちゃん』など、多くの作品を手がけてきました。今回の『余命300日の毒親』は、彼女の人生における大きな経験が反映された特別な一冊です。
また、コミックには介護・暮らしジャーナリストである太田差惠子さんによる解説も加わっており、介護に関する知識や現状をより理解できる構成になっています。
本書を手に取る価値
『余命300日の毒親』は単なるフィクションに留まらず、読む者に何らかの感情的な刺激を与えることができる作品です。自身も介護に関わることとなった人々にとって、この本は思いを整理し、心の拠り所となるでしょう。読者は、親との関係性や社会的な課題について考え直すきっかけを得られるはずです。
このコミックを通じて、多くの人が介護をすることの意味やその背景にある家庭の事情を理解し、共感を深めていくことを願っています。ぜひ、手に取ってご覧ください。
書誌情報
- - 定価:1,540円(本体1,400円+税)
- - 判型:A5判/176ページ
- - ISBN:9784046849052
- - Amazonリンク