大学生の就職活動におけるエピソード面接の問題点と新たな挑戦
株式会社履修データセンターが実施した調査によると、2026年卒業予定の全国の大学生1,000名のうち、なんと6割以上がエピソード面接に対して疑問を抱いていることが明らかになりました。この調査結果は、就職活動でのエピソード確認がどのように進化し、さらには何が問題視されているのかを浮き彫りにしています。
学生の懸念とジレンマ
多くの学生が“脚色”や“盛る”ことが前提となっている中で、「本当に評価されるべき資質と、それを測る手段が一致していない」と感じています。特に、56.3%の学生が「エピソードで判断する面接は疑問に思う」と答えており、周囲もその脚色に気づいている中で判断されることに納得できない様子が伺えます。
さらに、「自分の資質ではなく、表現力やコミュニケーション能力だけで評価されていると思う」と感じている学生は64.4%に上ります。この結果は、面接が語られるエピソードの内容よりも、話し方や雰囲気に基づく印象によって合否が決まっていると感じる学生が多いことを示しています。
エピソード重視の面接とその影響
調査の結果、「エピソード中心の面接が脚色を助長している」と回答した学生は62.2%に達しました。この傾向は、「話のうまさ」や「印象の良さ」が評価される場面が多いことに対する学生の戸惑いを反映しています。事実だけを語っても印象に残らないという暗黙のルールが広まっており、就活生の間では脚色が一般的になっている実態が浮き彫りになっています。
就職市場の変化と脚色の背景
2000年代初頭から普及した就職情報サイトの影響により、自己PRやガクチカの準備が必須となりました。その結果として、同じようなエピソードを語る他者との差別化を図るために、多くの学生がエピソードを脚色する傾向が強くなっています。また、大学での出席管理が厳格化し、課外活動に費やせる時間が減少したことも、エピソードの偏重を促進しています。
加えて、生成AIの登場は、学生が創作されたエピソードを準備することを容易にし、脚色から虚構へと変化する現状が見えてきました。株式会社マイナビの調査によると、生成AIを利用する学生は82.7%にも上り、特に就職活動での利用率は66.6%と急増しています。
新しい評価方法の必要性
求められるエピソードの真偽やレベル感が見えにくい現状は、学生の脚色を助長する要因となっています。そのため、企業は本当に知りたい資質を評価するために、表面的な印象に依存しない面接方法の再検討が急務です。
「盛らない就活」への挑戦
履修データセンターではこうした状況を改善するべく、「盛られたエピソードではなく学業場面で表れるスキルを客観的事実に基づいて伝える新たな面接方法」を提案しています。この新しい質問形式によって、学生は自らの考えや行動を基にした長所を企業に伝えやすくなり、企業側も相対的なレベルを客観的に判断できる場面を提供できるようになります。
このような取り組みが進むことで、大学生の就職活動の実態がより正しく評価される日が来ることを期待したいところです。企業と学生の双方にとって「盛らない就活」が進展することを願っています。