腟と腸のマイクロバイオームが女性の健康を支える新たな視点

新たな女性の健康アプローチ

近年、女性の健康の維持には腟と腸のマイクロバイオームが重要な役割を果たすことが明らかになっています。2025年に熊本市民会館で開催された第18回日本性差医学・医療学会学術集会では、婦人科専門医の吉形玲美医師による講演が行われ、腟と腸内細菌の相互作用が健康に与える影響について詳しく述べられました。

マイクロバイオームとは何か？

まず、マイクロバイオームとは、人体に共生する微生物群を指します。この微生物は免疫系や栄養素の分解に関与しており、例えば腸内ではエクオールなどの有益な物質が産生されます。エクオールは女性において、特に更年期症状の緩和や骨量減少のリスク低下に寄与するとされています。

腟マイクロバイオームの重要性

吉形医師は、腟内に存在する乳酸菌ラクトバチルスが、女性の健康において非常に重要であると強調しています。ラクトバチルスが乳酸を産生し、腟内を酸性に保つことで、自己防衛機能が向上し、性感染症のリスクを低下させることが期待されています。しかし、エストロゲンの減少が腟内環境を変化させ、腟内のラクトバチルスの数が減少することで、リスクが高まることがあります。

腸内との相互作用

腸と腟のマイクロバイオーム間には有意な相関があります。研究では、未閉経の女性では腟内と腸内のラクトバチルスの数が一致していることが確認されました。閉経後も同様の傾向が見られ、腸内細菌の多様性が腟内環境に良好な影響を与えているのではないかとされています。

プロバイオティクスの活用

腸内環境を改善するためには、プロバイオティクス（乳酸菌など）を含む食品やサプリメントの摂取が推奨されています。また、腟内に直接効果を持つ経腟プロバイオティクスの使用が腟内環境の改善に寄与する可能性もあります。

まとめ

吉形医師は、「腸を整えることが腟も整える可能性を示唆している」と述べ、女性の健康管理における新たな視点を提案しています。女性の生活習慣や食習慣を見直し、腸内環境を整えることが、腟の健康を保つための鍵となるでしょう。

自分自身の腸と腟の相互関係を理解し、それに基づいたセルフケアが今後の女性の健康市場で重要なツールとなることが期待されています。特に、生活習慣病リスクの低減や、更年期に伴う不調を和らげるために、マイクロバイオームの研究はますます注目されています。女性のライフステージに応じた適切なマイクロバイオームケアを行うことは、健康維持において非常に重要です。