新たに明らかになったきょうだい児の実態
2025年10月、医療法人社団ミネルバが588名のきょうだい児を対象に行った調査が注目を集めています。きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹と共に育った子どもたちのことですが、これまで彼らの声はあまり社会で取り上げられることはありませんでした。しかし、今回の調査を通じて、彼らが抱える思いや、家庭の状況がどのように人生の選択に影響を与えているかが明らかになりました。
調査概要
この調査は、全国を対象にインターネットで行われ、きょうだい児618名からの回答を得ました。調査の目的は、障がいの有無に関わらず、全ての子どもが安心して成長できる社会を実現するための声を集めることにありました。調査期間は2025年10月3日から10月6日までの4日間でした。
自己認識と成育環境
調査結果の中で注目すべきは、兄弟姉妹の障がいの種類です。最も多かったのは『発達障がい(自閉スペクトラム症など)』で、次いで『知的障がい』や『精神障がい』が続きました。このことは、家庭内でどのようなサポートが必要だったかを示す一因となっています。
また、彼らが育った家庭の構成を見ると、核家族で育ったケースが多く、特に母親や父親が中心となって支援する環境で育っていることが分かります。逆に、祖父母などが関与する家庭は少なく、子どもたちが家庭内でケアを行うケースが多かったことも把握されました。
社会とのつながりの乏しさ
調査では、年代によるきょうだい児の認識の違いも浮き彫りになりました。例えば、『きょうだい児』という言葉を知った時期を尋ねた結果、年齢が上がるにつれて知る機会が減少し、40代以上ではほとんど知らないというケースが多かったのです。これは、社会的な情報の普及が近年のものであることを示唆しています。
また、成長過程で気持ちを話せる相手がいたかどうかの調査も行われました。この結果、若い世代は家庭外にも相談相手がいる一方で、年代が上がると『話せる相手はいなかった』という回答が多い傾向が見られ、世代間での孤立感の違いが顕著でした。
家庭の役割が進路に与える影響
家庭内での役割を担うことが多かったきょうだい児において、進学や就職、恋愛、結婚といった人生の選択に家庭の状況が大きく影響している実態も明らかになりました。例えば、進路選択時には『家を離れられなかった』『親の期待を尊重した』といった理由が挙げられ、こうした背景に家族を支える意識が強く働いていることが分かります。
特に恋愛や結婚に関する調査では、相手家族の反応が気になるために不安を感じる人も多く、やはり家庭状況が影響している様子が伺えました。
きょうだい児の強みと必要な支援
調査に参加した多くのきょうだい児が、『責任感や忍耐力、共感・思いやりを得た』と回答しています。これらの特徴は、障がいのある兄弟姉妹とともに育つことで自然に形成されたものでしょう。逆に、経済的支援や学校・職場での理解の促進が必要だと考える声も多く、これらを改善していく必要があることが指摘されました。
まとめ
この調査は、きょうだい児が直面する現実を浮き彫りにし、家庭の中で自身の感情を抑えながら育ってきた彼らの思いを理解する重要な機会となりました。今後、より良い未来をつくるためには、きょうだい児やその家族を支える制度の見直しや周囲の理解が欠かせません。すべての人が安心して生きられる社会を築くために、この課題に取り組むことが求められています。