ジャンクアートの巨匠、小野忠弘氏の作品が坂井市に寄贈
福井県坂井市のONOメモリアルでは、故小野忠弘氏のアート作品111点が今回寄贈された。小野氏は現代美術の先駆者であり、その作品は廃材を使った大胆な造形から「ジャンクアート」と呼ばれている。また、1959年には米国の雑誌「LIFE」によって「ジャンクアートの世界の7人」に選ばれるほど、その国際的評価は高い。
この寄贈は、親族からの2回目の贈り物であり、孫の小野真人さんが9月20日に坂井市三国町公式行事として行われた。寄贈式では、池田市長や小野氏の教え子である戸田正寿さんも出席し、故人の思い出や作品の意義について語り合った。
小野氏は青森県弘前市出身で、1938年に東京美術学校を卒業後、教育者としても尽力してきた。特に福井県立三国高校では多くの学生に影響を与えただけでなく、自らも多作なアーティストとして活躍した。彼の作品は、漂流物や廃品を素材とし、独自のスタイルを確立したミクストメディア作品が特徴的で、国内外で多くの展覧会に出品されている。
今回寄贈された作品群は、1969年以降のものであり、特に晩年の作品が中心となっている。例えば、貝殻やホース、段ボールを使用し、絵の具を用いた「ドリッピング」技法を取り入れるなど、絵画と造形の境界を超える作品が見られる。
寄贈式では、池田市長が小野真人さんに感謝状を贈呈し、小野氏の作品が地域の子供たちに愛される文化の象徴であることを強調。小野さんは、その作品が特に子どもたちに見て、感じてほしいとの願いを持っており、その思いがこの寄贈にも込められているという。
また、戸田正寿さんは、小野氏が「常にライバルは子どもたちだ」と語っていたことを引き合いに出し、彼らの純粋な感性から生まれる作品には特別な価値があると述べた。さらに、作品を収集している髭分真二さんは、アートをただスマートフォンの画面を通して見るのではなく、実際に目の前で体感してほしいと語る。
寄贈された作品は、今後ONOメモリアルで常設展示される予定だ。これを機に、地域の人々がアートへの理解と興味を深めることが期待されている。
ONOメモリアルへの問い合わせは、☎0776(82)5666(坂井市龍翔博物館)まで。地元の学校や団体との連携を通じて、より多くの人々に小野氏の作品が直に触れられる機会が増えていくことを願ってやまない。