フィリピン・マニラでのLRT1号線省エネルギー化計画
フィリピンの首都マニラ圏では、都市の交通網が発展途上にあり、特に鉄道路線が限られています。この度、独立行政法人国際協力機構(JICA)と阪急電鉄が手を組み、都市鉄道LRT1号線の省エネルギー化を推進する新たな取り組みを開始しました。
マニラ首都圏の交通事情
マニラ首都圏は、東京23区に相当する広さに、約1.4倍の人口を抱えておりながら、鉄道の運行本数はわずかなものです。市内の移動は多くが道路に依存しているため、渋滞が日常的に発生し、大気汚染やCO2の排出増加といった問題が深刻化しています。2020年時点では、移動に伴う経済的損失が1日あたり38億ペソ(約90億円)にも及ぶとの試算があります。
このような背景を受け、JICAはマニラ圏の交通網整備に向けた多様な支援を行ってきました。特に、LRMCが運営するLRT1号線は今後の大きな鍵を握る存在です。
新たな技術協力の内容
今回の技術協力は、2025年6月25日から2026年5月29日の期間にて実施されます。JICAと阪急電鉄は、LRT1号線における列車運行の電力消費状況を正確に把握し、省エネルギー施策の導入評価を行います。これにより、効率的な運行と二酸化炭素排出量の削減を目指し、具体的なロードマップを作成する予定です。
阪急電鉄は2025年から全路線でCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル運行」を開始する意向を示しており、その取り組みの一環としてLRT1号線の支援を行うことになります。また、2024年にはLRMCへの出資も決まり、協力体制が強化されています。
環境負荷の低減に向けた取り組み
この技術協力を通じて、JICAと阪急電鉄はLRT1号線の省エネルギー化を進めることでマニラの公共交通における環境負荷を低減し、持続可能な交通インフラの構築に寄与していきます。LRT1号線の省エネルギー化は、環境意識の高い交通網づくりに向けた重要なステップといえるでしょう。
さらに、LRT1号線は1984年に開業し、2015年からはLRMCが運営・保守を行っています。現在、25の駅があり、2024年11月に5駅の延伸が予定されています。現在の路線長は約27kmで、フィリピン運輸省傘下のLight Rail Transit Authorityが施設の保有者となっています。
JICAと阪急電鉄の取り組みはフィリピンの未来に向けて大きな影響を与えるものであり、今後の進展が期待されます。具体的な成果がどのように現れるか、その動向に注目していきたいです。