デザインの質を保つヒアリング力
デザインの現場において、ヒアリング力の重要性がますます高まっています。近年、デザイナーの数は急増し、コロナ禍をきっかけに新たにデザインの道に進む人々も多くなりました。しかし、その一方で、デザインのクオリティが揺らいでいる現実があります。これは、クライアントとのコミュニケーションが十分でないまま制作を進めてしまうことが原因です。適切なヒアリングなしに制作が進められると、「イメージと違う」「何度もやり直しが発生する」といった事態が頻繁に起こり、その結果、蓄積されたコストと時間が無駄になってしまいます。
便利な時代の影響
オンラインツールやテンプレートの普及は、これまで手間と時間を要していたデザイン作成を容易にしましたが、それと同時に "速さ" や "低コスト" ばかりが重視されるようになりました。そのため、じっくりとクライアントと話し合う機会が失われ、重要なビジョンや達成すべき目標を共有する余裕がなくなってしまったのです。テンプレートに頼ることができる一方で、デザインの背後にある意味や価値は消えてしまいかねません。
そこで重要なのが、丁寧にヒアリングを行い、クライアントの声をしっかりと反映させることです。この姿勢こそが、デザインの質を確保し、クライアントの期待に応えるための鍵になるのです。
ヒアリングがなぜ投資なのか
ヒアリングは単なる面倒なプロセスではなく、将来的な無駄を減らすための重要な「投資」と言えます。プロジェクトのスタート時に時間をかけてヒアリングを行うことで、「後から手直しが必要になる」リスクを避けることができ、結果的にはコストを抑えることができます。たった30分の最初の対話が、後々の膨大な手戻り作業を回避できる場合もあります。しかし、テクノロジーが進化し、手軽にデザインを作成できる時代であるにもかかわらず、ヒアリングは軽視されがちです。
ビジネスパーソン全般にとってのヒアリング能力
実は、ヒアリング力はデザイナーだけの特権ではありません。ビジネスパーソン全般において、ヒアリングのスキルは成功を左右する要素です。日本情報システム・ユーザー協会が発表した企業調査によれば、プロジェクトが計画通りに進まなかった原因の多くが「計画時の考慮不足」とされています。この数値は、計画段階でのヒアリングの重要性を如実に示しています。ヒアリングの技術を磨くことは、プロジェクトの円滑な進行をもたらす重要な要素です。
書籍『デザインはヒアリングからはじまる』の紹介
株式会社マイナビ出版は、2025年11月21日に『デザインはヒアリングからはじまる』を発表します。この本は、デザインプロジェクトを円滑に進行させるためのヒアリング力を養う方法を詳しく解説しています。実践的な技法から、有効な対話の仕方まで、デザイナーやビジネスパーソンにとって役立つ知識が満載です。
書籍の発売を記念して、2026年1月24日に大阪でイベントを開催予定です。参加者は実際にヒアリングテクニックを学び、質疑応答の場も設けられます。
デザインがビジネスにおいて極めて重要な役割を果たす時代で、ヒアリングに基づくデザインアプローチが求められる中、この本は非常に有益な一冊となるでしょう。デザインの質を維持するために、あなた自身のヒアリング力を高めていきましょう。