矢崎総業、竹資源を活かした新しい複合材料を紹介
日本の自動車部品メーカーである矢崎総業株式会社が、米国子会社であるYTC America Inc.を通じて新たな材料開発を進めています。この新しい複合材料は、なんと「竹」を素材の一部に使用しており、環境への配慮と性能向上を同時に実現しています。
環境問題への挑戦
自動車産業は、地球環境への影響を多分に含んでおり、カーボンフットプリント(CFP)問題は深刻です。これまでもポリプロピレンや鉱物資源を用いた複合材料が一般的でしたが、これらは炭素排出を増加させる原因になっていました。矢崎総業は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、新たに竹をフィラーとしたポリプロピレン/竹複合材料の開発を行いました。
この新型複合材料は、従来の材料に比べてカーボンフットプリントを約50%も削減できるとして注目を集めています。竹が吸収した二酸化炭素は「缶詰」に例えられる特性を持ち、その内部に保持されることで、環境へ与える影響を最小限に抑えています。
竹の驚くべき特性
竹は急速に成長し、一般的な木材の4倍以上の炭素を吸収することが知られています。世界には約1,700種類の竹が存在し、日本の孟宗竹やコロンビアのグアドゥア竹が特に注目されています。日本ではかつて竹は生活資材として広く利用されていましたが、現在は「放置竹林」が問題視されています。これは竹が無管理のままで増え続け、周辺環境に悪影響を及ぼす結果となっています。
矢崎総業は、竹資源を活用することで、環境負荷の低減だけでなく、社会的課題の解決にも寄与することを目指しています。
技術的な挑戦を克服
ポリプロピレン/竹複合材料の開発にあたっては、いくつかの技術的課題が存在しました。天然繊維の吸湿性や親水性の課題を克服するために、研究開発を重ね、樹脂と竹の接合最適化が実現しました。これにより、優れた機械的特性を持つ複合材料が完成し、自動車業界の厳しい基準にも対応できるようになりました。
自動車部品への応用
新たに開発されたポリプロピレン/竹複合材料は、特に自動車部品への利用が期待されます。既存のポリプロピレン材料にこの竹素材を加えるだけで、カーボンフットプリントの削減が見込めるため、さまざまな車両部品での使用を計画しています。
矢崎総業のビジョン
1941年に創業した矢崎総業は、世界中に拠点を持ち、ワイヤーハーネス事業やエネルギー機器の開発・製造を展開。環境への配慮をもって世界のモビリティ社会に貢献し続けてきました。今後も持続可能な社会を目指す取り組みを進めていくことでしょう。
この新しい竹由来の複合材料は、環境保護と技術革新の融合として、明るい未来を示唆しています。