日本における金融教育の現状と影響
三井住友信託銀行が設立した「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(以下、ミライ研)は、2025年1月に全国1万人を対象にした金融教育に関する独自のアンケート調査を実施しました。この調査は、金融教育の浸透状況やその内容について深く掘り下げることを目的としています。
1. 金融教育の制度化と進展
近年、日本では金融教育の制度化と体系化が急速に進んでいます。特に、2024年4月に設立された「金融経済教育推進機構」(J-FLEC)は、金融庁の方針に基づき、全国で様々な金融教育プログラムを推進しており、若い世代から壮年世代までを対象に金融リテラシーの向上を目指しています。2022年度の学習指導要領の改訂により、高校家庭科や公民科での授業内容が拡充されていることもあり、特に若年層への影響が期待されています。
2. 受講経験率が高い若年層
調査結果によると、金融教育の受講経験率は全年代で約3割ですが、特に18-29歳の若年層では48.5%に上ります。また、18-24歳の層に絞ると、受講経験率はなんと60.7%に達します。これらの数字は、高校での金融教育の拡充に起因していると考えられ、これが将来的においても続くことで、受講経験率が約90%に達する可能性も示唆されています。
3. 学んでいる内容の分析
金融教育では、何が学ばれているのでしょうか。調査の結果、最も多く傾向が確認されたのは「家計管理」で、続いて「資産形成」「ライフデザイン」というテーマが上位に挙げられました。特に20代では、家計の管理方法や経済的なプランニングに関する内容が重要視されています。一方、40代以上では「資産形成」や「公的年金」が重要視されていることが分かりました。
4. 家計への影響
金融教育を受けた人々は、その内容を実生活にどのように活かしているのでしょうか。調査によれば、家計管理を学んだ人のうち、約3分の2が実際に家計管理を行っていることが分かりました。ライフデザインについては、学習者の半数以上がライフプランを具体的に立てていると報告されています。資産形成についても、約半数が積立投資を実施しており、学んだ内容に基づいた実生活の変化が確認されています。
5. 社会人の学びの機会
若年層が受講しやすい金融教育の場が整備されている一方で、社会人における金融教育の受講チャンスについても考察が必要です。特に「企業型確定拠出年金(DC)」への加入が、社会人としての金融教育受講において優位な要素となっていることが示されています。DC加入者は受講経験率が約3倍となり、特に資産形成についての知識が高いことが分かりました。
6. 結論と今後の展望
2022年の学習指導要領改訂による金融教育の受講経験者の増加は、今後の金融リテラシー向上に期待が持たれます。ただし、学校教育だけでなく、社会人向けの学びにおいても継続的な支援が求められます。今後、国民の金融教育がますます浸透していくことが望まれ、そのためには必要なテーマに応じた教育機会の提供が不可欠です。様々なデータに基づいた調査結果が、金融教育の重要性を伝えており、この流れをより進行させるにはどうすれば良いのか、我々も考えていく必要があります。
詳細なアンケート調査結果については、資産のミライ研究所のサイト(
こちら)でもご覧いただけます。