近未来の職場で求められる新たなスキルとは?
近年、スキル経済が注目を浴びる中で、企業が求めるスキルが大きく変化しています。特に、倫理的判断力や共感力、忍耐力・冷静さのような「固有スキル」が、リーダーシップや創造性よりも重要視される傾向が強まっています。
グローバルなスキル調査の結果
ランスタッド株式会社が公開した「高需要スキル世界調査」によると、全世界24か国を対象にしたこの調査では、1,000万件以上の求人情報と1億3,600万件以上の履歴書をもとにスキル傾向が分析されています。この調査に日本は含まれていませんが、世界的な人材の需給バランスやスキルのトレンドを知る上で、非常に有益な情報を提供しています。特に、データサイエンスとAI関連のスキルは高い需要を誇っており、企業間の競争が激化しています。
スキル需要の変化
ホワイトカラーの職種では全体的なスキル需要が減少傾向にあり、特にマーケティング・コンテンツ・広告分野で40%もの減少が見込まれています。一方で、熟練した技能職の需要は高まり続けており、特にメンテナンスや医療、製造業では人材不足が深刻です。これに対し、データサイエンス分野は今後供給が増える見込みですが、その一方で成長し続けるスキル群も存在しています。
固有スキルの重要性
調査によれば、倫理的判断力や共感力、忍耐力・冷静さなどは、企業が必要とする新たな固有スキルとして浮上しています。「忍耐力・冷静さ」に関する求人情報での需要は81%増加しており、これに関連する履歴書も114%上昇しています。これに対して、リーダーシップや創造性は減少傾向にありますが、企業は労働者がこれらのスキルを持つことを重視しており、今後の市場での重要性が増すことでしょう。
報酬の動向
スキル別平均報酬ランキングでは、データサイエンスやクラウドコンピューティング関連のスキルが高い報酬を得ています。地域による報酬差は大きく、例えば、クラウドコンピューティングのスペシャリストの給与はスイスでインドの820%高いという実情が明らかになっています。この差は企業にとってはオフショアリングやアウトソーシングの機会を提供しますが、スキルを持つ人材の確保が難しいという問題も同時に抱えています。
男女格差の問題
また、STEM(科学、技術、工学、数学)の分野では男性優位が続いていますが、調査では早期のキャリアを持つ女性の高需要なポジションへの就業が増加している様子も見られます。企業は女性人材を効果的に惹きつけ、昇進させるための方策を実施する必要があります。
ランスタッドのコメント
ランスタッドの杉浦進哉ジャパンカントリーヘッドは、スキルベースの採用の加速やアルムナイ採用の活発化を指摘し、新卒採用の人数を上回る企業が増えていることを重要視しています。特に倫理的判断力や共感力が新たなキースキルとして浮上してきており、今後の企業戦略において無視できない要素となるでしょう。
結論
スキル経済が進化する今、企業と求職者双方にとって、新たなスキルの習得と活用がますます重要となります。リーダーシップや創造性の重要性が減少する一方で、固有スキルの必要性が高まる中、企業は多様性を持った人材を確保するための戦略を考え直す必要があります。ランスタッドの調査結果は、その形を模索するための貴重なデータとなるでしょう。