能登半島地震の傷跡と再生の美
2025年1月18日から2月2日まで、東京のYUGEN Galleryで開催される特別展「朽ちゆく果てにも美は宿る」では、能登半島地震により破壊された国宝級の作品に焦点を当て、写真家・蓮井幹生の撮影した17点が公開されます。本展は、未曾有の天災によって傷ついた美しさを記録し、私たちにその美を再認識させると同時に、新たな希望をもたらすことを目的としています。
この個展の背景にあるのは、石川県小松市に位置する九谷焼の窯元、錦山窯の歴史的な状況です。三代目の吉田美統人間国宝を含む多くの名工たちの傑作が、その技術や感性を表現してきましたが、能登半島地震により多くが破損しました。蓮井幹生は、その割れた破片に宿る新たな美を見出し、1億画素の超高画素カメラを駆使して撮影に挑みました。
破壊の美と蓮井幹生のアプローチ
蓮井はこの展覧会に関して、次のような思いを寄せています。「割れた作品を撮影することに、何故か強い意義を感じた」と。彼は、時と共に物が朽ちゆくこと、そしてその中に存在する美しさを日本文化の特徴として捉えており、自然の摂理を表現し続けています。彼のカメラを通して、観客は過去と未来のつながりを感じることができるでしょう。
また、本展は美の記録であるだけでなく、復興支援の一助ともなります。展示作品の売上の一部は災害復興に寄付されることが決まっており、訪れる人々は美しい作品を鑑賞するだけでなく、復興に向けた温かな手助けをすることができます。
錦山窯の名工たち
錦山窯は、特に「釉裏金彩」という加飾技法を駆使し、作品の緻密さや絵画的な美しさで知られています。最初の人間国宝に認定された吉田美統は、その技術をさらに高め、後世に継承されるべき素晴らしい作品を世に送り出しました。しかし、自然の脅威によって、その大切な遺産が失われるという現実を知った時、蓮井はその破壊を静かに受け入れ、一つ一つ丁寧に撮影することを決意しました。
展覧会の巡回と未来への展望
本展の東京での開催終了後、さらに福岡・YUGEN Gallery FUKUOKA、石川県のギャラリー嘸旦での巡回が予定されています。2025年3月8日から3月23日まで福岡での展示が行われる予定です。美は永遠に残るものではありませんが、それが再生する姿を見ることは、私たちにとって大きな意義を持ちます。ぜひ多くの方に、この展覧会を通じて時の流れや物の循環に思いを馳せていただきたいと思います。
まとめ
「朽ちゆく果てにも美は宿る」は、ただのアート展ではなく、人と自然の関係を見つめ直す機会を提供します。この展覧会を是非前向きな気持ちでお楽しみください。最新情報や入場については、YUGEN Galleryの公式サイトでご確認をお願いいたします。