垂秀夫元駐中国大使の回顧録『日中外交秘録』が注目を集める
2023年6月11日、株式会社文藝春秋から元駐中国大使の垂秀夫氏の新刊『日中外交秘録垂秀夫駐中国大使の闘い』が刊行され、話題となっています。この著作は、中国政府との緊張した関係の中で、どのようにして日本の外交が展開されてきたのかを彼の個人的な視点から描いています。
日本外交の裏側を知る
日本と中国の外交は、表面的には「やられっぱなし」と評価されることもありますが、垂秀夫氏は決してその立場に甘んじることはありませんでした。情報収集に優れ、冷静な戦略で対応した彼は、中国共産党内に構築した人脈を通じて、重要な情報を次々と入手しました。
彼は、「秘話満載」の外交秘録を通じて、かつての自らの信念として、中国共産党からの圧力に屈しない姿勢を貫いてきたことを示しています。数々の困難を乗り越え、逆風の中でも真実を見極め、外交の舞台で自己の役割を果たしてきたことが本書の魅力です。
垂秀夫氏の背景とキャリア
垂秀夫氏は1961年に大阪で生まれ、京都大学法学部を卒業後、1985年に外務省に入省しました。彼は、中国語研修組に所属し、これまで一貫して中国・台湾との関わりを深めてきました。特に注目すべきは、彼が在中国日本国大使館での公使や外務省領事局長としての役割を通じて、秘蔵の人脈を生かして情報収集を行ってきた点です。
彼は、自身が「良家の子息でなければ無理」とされた外交官試験を突破した苦労を思い出しながらも、入省当初の「端牌」の役職から、情報の専門家としての地位を築いていきました。この成功の背景には、彼自身で見出した「好きなことだけやろう」という生き方が大きかったようです。
中国共産党の「戦狼外交」という壁
著書の中で、垂秀夫氏は中国の「戦狼外交」についても触れています。これは国家の利益を守るために他国に対して攻撃的な姿勢を示す外交手法であり、対中外交における大きな壁とされています。しかし、彼はこうした脅威に対しても、一歩も引かずに情報戦を繰り広げ、中国共産党をギャフンと言わせることに成功したと述べています。
日本の未来に向けての提言
「日中外交秘録」は、ただの外交秘話にとどまらず、日本が中国にどう対峙するべきかの戦略を考えさせる内容にもなっています。垂秀夫氏は、今後の日本外交において、何を実現すべきなのかを論じており、日本が直面する中国の影響力を理解し、適切に支援を行うための情報を提供しているのです。
読後感と期待
本書の中には、垂秀夫氏が命懸けで挑んだ中国の改革派知識人たちへの協力や、歴史に恥じない外交の重要性が強調されています。この考え方に基づく行動は、彼が「中国共産党が最も恐れる男」と称される所以でもあります。彼の目を通過して、中国の外交の実相と日本の未来に向けたヒントが凝縮された本書は、多くの人々にとって必読の一冊となることでしょう。