常石造船、メタノール二元燃料船の設計承認を取得
常石造船株式会社(広島県福山市)は、2050年カーボンニュートラルを目指し、重油焚きの既存船を改造するためのメタノール二元燃料船の設計において、2024年12月25日に一般財団法人日本海事協会(ClassNK)から基本設計承認(Approval in Principle:AiP)を取得したことを発表しました。これは、Maersk Mc-Kinney Møller Center for Zero Carbon Shipping(MMMC)と共同で進めていた重要なプロジェクトです。
プロジェクトの背景
本プロジェクトは、常石造船が得意とする中型ばら積み貨物船KAMSARMAXの標準設計に基づいています。特に、既存船の改造には新たに設置するメタノール燃料タンクの位置決定が大きな課題となりました。船尾、船底、中央部といった複数の配置案が比較された結果、船倉内への配置が最適と判断されました。さらには、HAZID会議とClassNKによる技術審査を介して、安全性と技術的な成立性が確認され、無事にAiPを取得に至りました。
船舶の重要性
現在、世界の船隊においてばら積み貨物船は約15%を占め、その中でもKAMSARMAXばら積み貨物船は全体の約30%に相当しています。船舶のライフタイムバリューが数十年にわたるため、既存船舶の脱炭素化は持続可能な社会に向けての重要なアプローチとなります。また、メタノールは常温常圧で液体のため、船上での保管と取り扱いが容易であり、GHG排出量が従来燃料に比べ少ないため、未来の代替燃料としての期待が高まっています。
今後の展望
常石造船の代表取締役社長執行役員、奥村幸生氏は、「我々の目標は、2035年までに全ての新造船を二元燃料船に転換し、既存船舶に対する脱炭素化の解決策を提供することです。このプロジェクトはその第一歩として意義深いものです」とコメントしました。メタノールの普及が進めば、新造船だけでなく既存船の改造も活発化し、海運業界のカーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献できるでしょう。
常石造船の企業情報
常石造船株式会社は、1917年に創業し、広島県福山市に本社を構える造船業界のリーダーです。日本国内外の各拠点でばら積み貨物船、コンテナ運搬船、タンカーなど幅広い船舶を手がけており、その技術力は高く評価されています。
- - 本社所在地: 広島県福山市沼隈町常石1083
- - 資本金: 1億円
- - 従業員数: 約20,000人(常石造船グループ全体)
- - 企業ホームページ: 常石造船
このように、常石造船のメタノール二元燃料船に関する取り組みは、持続可能な海運業界を築くための重要な一歩といえるでしょう。