新刊『中動態の世界 意志と責任の考古学』が話題に
著者・國分功一郎氏の最新作『中動態の世界 意志と責任の考古学』が、2025年3月28日に新潮文庫から発売され、さっそく重版が決定しました。刊行された本書は、単行本として初めて登場した際から注目を集め、紀伊國屋じんぶん大賞2018や第16回小林秀雄賞を受賞した実績があります。文庫版では、同時に刊行された著書『暇と退屈の倫理学』の成功も影響し、大きな話題となっています。
書籍の内容とは?
本書は、初版が2017年に医学書院より発表されたもので、依存症について考えてきた著者が、私たちの思考がいかに「能動」と「受動」に縛られているかに着目しています。その中で、失われた文法カテゴリー「中動態」を介して、私たちの思考の可能性について追求しています。
著者は、「自分が行動する(する)」「誰かに行動させられる(される)」という二つの対立の中だけでは捉えきれない、さらなる思考の広がりを提案しています。人間の自由を探求し、新時代の哲学としての点からの考察を行っています。
國分功一郎氏のコメント
著者は、読者に向けて「難しいと思ったら飛ばしてください。でも、後で、いつか読めばいいのです。大切なのは自分なりの『中動態』のイメージをつかむことです。」と述べています。これは、難解そうに見える哲学書でも、自分自身の生活の中で必ず何かを理解できる要素があることを伝えています。
絶賛の声
この新刊には、各界の著名人からも称賛の声が寄せられています。映画監督の濱口竜介氏は、「中動態」を知ることで自身の作品に対する捉え方が変わったとコメント。美学者の伊藤亜紗氏は、本書が世界を新たに見る視点を提供する哲学書であると称賛しています。また、紀伊國屋じんぶん大賞受賞者の斎藤哲也さんや山本貴光さんも、文章の展開や内容の深さに感動したとのコメントを寄せています。
「中動態」とは何か
「中動態」という概念は、ほとんどの人が学校で学ぶ「能動」と「受動」の対立だけでは説明できない現実を示しています。本書によれば、私たちの日常に潜むこの複雑な状態は、文化や歴史の中で姿を消したものとして捉えられます。たとえば、誰かを好きになるという行為が、単なる能動か受動かではなく、より豊かな解釈を持つことができるということを教えています。
文庫版に新たに収録された補遺
文庫版では、補遺として「責任とは何か」をテーマとする新たな章が追加されました。著者は、意志と責任の関係を探る中で、現代社会に潜む問題を掘り下げています。この章においては、「責任」という概念が如何にして現代の人々の思考に影響を与え、場合によっては歪みを生じさせるのかを論じています。
売行き好調な『暇と退屈の倫理学』
前作の『暇と退屈の倫理学』は、特に20代から40代の若年層の読者を中心に広く支持を受け、累計40万部を突破しました。これは哲学書として異例の結果であり、名だたる大学でも人気の一冊となっています。この内容の充実さと、現代における哲学的な問題を扱ったため、読者の心に響く要因となったのです。
著者について
國分功一郎氏は、1974年生まれで東京大学大学院総合文化研究科の教授を務めています。彼は哲学を専門としており、さまざまな著書があります。特に「中動態」というテーマを深く探求しており、その視点を通じて新たな哲学的議論を展開しています。
このように、『中動態の世界 意志と責任の考古学』は哲学的な観点から現代社会において重要なメッセージを発信しており、より多くの読者に親しまれることが期待されています。