大阪市での革新的な性能試験に向けた取り組み
大阪府大阪市にある北浜GRF株式会社(KGC)では、AIデータセンター用の革新的な油液型液浸サーバーの性能試験を実施しています。この試験は、KGCが開発した油液型液浸サーバーを用いて、消費電力やエネルギー効率、また騒音に関する測定と評価を行うものです。
油液型液浸サーバーは、基板ごとに絶縁性の油液に投入することでGPUやメモリーを冷却する先進的なシステムです。このシステムを使用することで、従来のサーバーに比べ電力消費や騒音を大幅に削減することが可能となります。
共同研究の背景と目的
今回の性能試験は、国立大学法人である東北大学のサイバーサイエンスセンターとの共同研究契約に基づいて進められています。目的は、油液型液浸サーバーの電力需要の削減や騒音の低減を目的とし、さまざまな試験データを取得することです。これによりAIデータセンターの運用効率を向上させることを狙っています。
現代のAI技術の進化に伴い、データセンターへの需要は急増しています。しかし、このデータセンターが使用する電力も膨大で、特にNVIDIA製のGPUチップの発熱が問題視されています。数十MWに及ぶ電力消費が現状の課題であり、これを効率的に冷却し、消費電力を抑えることが必要とされています。また、従来の空冷方式に伴う騒音も近隣住民の反対運動を引き起こす要因ともなっています。これらの課題を解決できる可能性があるのが、今回開発された油液型液浸サーバーなのです。
性能試験の具体的な内容
今回の性能試験は、油液型液浸サーバーと熱交換ユニット(CDUユニット)を用いた構成になっています。屋外型のコンテナにこれらのシステムを収め、外にはクーリングタワーを設置して二次冷却を行います。実験には、GPUサーバーを全負荷状態にするため、8つのGPUとダミーヒーターが設置されます。
実験は以下の手順で進められます。まず、GPUサーバーに全負荷がかかるような計算プログラムを実行し、その際の電力消費を測定します。次に、全負荷でのPUE(Power Usage Effectiveness)を算出し、さらにサーバーのみでも同じ試験を行います。また、計算力とエネルギー消費量の効率を求めるため、エネルギー効率も算出されます。
油液型液浸サーバーの特長
KGCが開発した油液型液浸サーバーシステムでは、従来のフロン系液体冷却方式に代えて、高絶縁油を冷却媒体として使用しています。これにより、温暖化ガスの問題を回避しつつ、高い冷却性能を実現しています。加えて、出光興産が開発したサーバー冷却油を用いており、引火点が高い特徴を持ち、さらに高流動性と高絶縁性も兼ね備えています。
この革新的なシステムが、AIの発展にどう寄与していくのか、今後の研究に注目が集まります。データセンターの電力消費を抑え、騒音問題を解決することができれば、AI技術のさらなる発展の道を開いていくことでしょう。