世界が注目!王谷晶『ババヤガの夜』が英国推理作家協会賞(ダガー賞)最終候補に!
日本で熱狂的な支持を得ていた王谷晶氏の小説『ババヤガの夜』(河出文庫)が、その英訳版『The Night of Baba Yaga』として、世界最高峰のミステリー文学賞とされる英国推理作家協会(CWA)主催のダガー賞、翻訳小説部門の最終候補作(ショートリスト)に選出されたことが発表されました。この異例の快挙は、日本の文学が国際的な舞台でいかに評価されているかを改めて示すものとなり、文学界に大きな衝撃を与えています。
ダガー賞とは?そして日本人作家の軌跡
英国推理作家協会賞、通称「ダガー賞」は、ミステリー文学界で最も権威ある賞の一つとして知られています。その歴史の中で、翻訳小説部門にはこれまでに横山秀夫の『64』、東野圭吾の『新参者』、伊坂幸太郎の『マリアビートル』といった日本を代表する傑作がノミネートされてきました。今回の最終候補作6作品の中には、『ババヤガの夜』のほか、柚木麻子氏の『BUTTER』も含まれており、日本人女性作家の国際的な躍進が顕著になっています。
『ババヤガの夜』とは?スリリングな「シスター・バイオレンスアクション」
『ババヤガの夜』は、暴力団会長の令嬢を護衛することになった主人公が、裏社会の深い闇と、少女が抱える秘密に迫っていく過程を描いた作品です。そのスリリングかつエモーショナルな展開から「シスター・バイオレンスアクション」と称され、2020年の刊行当初から国内で大きな反響を呼び、日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉の候補にも選出された注目作でした。
海を渡り、各国で絶賛される『The Night of Baba Yaga』
英訳版『The Night of Baba Yaga』の海外での評価は、まさに破竹の勢いでした。「テレグラフ」誌で「スリラー・オブ・ザ・イヤー」に選出され、「クライム・フィクション・ラバー」では最優秀翻訳賞(編集者選)を受賞。さらに、ロサンゼルス・タイムズの「この夏読むべきミステリー5冊(2024年)」にも選ばれるなど、その勢いは止まることを知りません。
特筆すべきは、今年5月18日にイギリスで開催されたミステリー文学フェスティバル「CrimeFest」が主催するスペクセイバーズ新人犯罪小説賞を受賞したことです。最終候補に残った6作品のうち、唯一の翻訳作品でありながら、その栄誉を勝ち取ったことは、作品の持つ普遍的な魅力と、翻訳家サム・ベット氏の卓越した手腕が認められた証と言えるでしょう。
著者も驚きと喜び「まさか入るとは」
この快挙の報を受け、著者である王谷晶氏からは驚きと感謝のコメントが寄せられました。「担当編集者と『ショートリストに入った際のコメントはどうしますか?』『いや、入らねえと思うのでいらんでしょう』というやりとりをしていたまさにその瞬間に情報が入ってきたので大変驚いております」と、その率直な言葉は、今回のノミネートがいかに予想外で喜ばしい出来事であったかを物語っています。また、王谷氏は「この本を英訳して下さったもう一人の候補者である翻訳のサム・ベットさんに篤くお礼を申し上げます」と、翻訳者への深い感謝の意を表明しました。
世界の読者を魅了する『ババヤガの夜』
海外メディアや読者からの声は、『ババヤガの夜』がジャンルを超えていかに多くの人々に響いているかを示しています。
「怒り、ユーモア、スリル満載」(The Times紙)
「激しい暴力と素晴らしい優しさが交互に訪れる」(The Guardian紙)
「女の力を描いた、シャープでストイックな物語」(Los Angeles Times紙)
「女性主導のリベンジ・スリラーの極致」(Crime Fiction Lover)
「手に汗握る、壊れないスリラー」(Tokyo Weekender)
「暴力と流血の中に本物の優しさがある、とても没入感のある作品」「読んでいるうちに完全に映画として頭に浮かんできた」といった読者のコメントは、作品が持つ強烈なインパクトと、読者の感情を深く揺さぶる力を明確に伝えています。さらに、「キル・ビルやジョン・ウィックの雰囲気の本を探してるなら、これ以上のものはない」という声もあり、そのアクション性の高さも称賛されています。
著者・翻訳者プロフィール
王谷 晶(おうたに あきら):1981年東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』『君の六月は凍る』など多数。独特の筆致で多くの読者を魅了している。
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サム・ベット(Sam Bett):1986年ボストン生まれの小説家、翻訳者。三島由紀夫や太宰治作品の翻訳を手掛けるほか、川上未映子作品の共訳でも知られる国際的な翻訳家。
ダガー賞の受賞作は、7月3日(現地時間)に発表される予定です。世界最高峰の舞台で躍進を続ける日本人女性作家の快挙に、ぜひご注目ください。