オーストラリアのディープCストアが新たな資金調達を実施
オーストラリアのCO₂回収貯留事業会社であるディープCストアが、インキュベイトファンドから約3.5億円の資金調達を成功しました。この資金は、同社が推進する世界初の越境型浮体式CO₂貯留(CCS)ソリューション「CStore1」の実現に向けたものです。
CCSの重要性と背景
現在、世界は気候変動に対処するための取り組みを強化しています。その中でCCSは、CO₂を効率的に回収し、地下に貯留する方法として注目されています。国際エネルギー機関(IEA)によれば、脱炭素化の目標を達成するためには、年間51億トンのCO₂が必要だとされています。しかし、現時点で日本にはCCS施設が存在せず、世界全体でもその実施量はわずか0.49億トンに留まっています。特に、日本政府は2024年に「CCS事業法」を閣議決定し、CCSの推進に向けた制度を整備する姿勢を見せています。これらの背景から、各国での計画と投資が急務となっています。
ディープCストアは、他社がまだ進出していない沖合の帯水層を活用した新たな大型貯留地の開発に挑戦してきました。その成果として、オーストラリア政府から大規模なCO₂貯留鉱区の付与を受けており、同社はアジア太平洋地域における脱炭素化に貢献する世界初のCCSソリューション「CStore1」の開発を進めています。
CStore1の特徴
「CStore1」は、日本やアジア太平洋地域の産業から年間約300万トンの液化CO₂を収集し、専用船でオーストラリア沖の自社の大規模CO₂貯留鉱区まで運びます。そこで、洋上浮体式ハブを使用してCO₂を圧入し、永久に貯留する仕組みです。このシステムの主な強みには、複数の排出源からの受け入れが可能なマルチユーザー対応、パイプライン距離の最小化、船舶や浮体設備の再利用によるコスト削減、そしてグローバルな展開が可能な拡張性があります。
ディープCストアは、J-POWERなどの大手エネルギー企業と提携し、アジア太平洋地域における越境型CCSの先駆者としての役割を果たしています。今後、ディープCストアはJ-POWERやAzuliとの戦略的なパートナーシップを検討し、この新たな取り組みが日本のカーボンゼロ達成に寄与することを目指しています。
投資家や創業者のコメント
インキュベイトファンドの本間真彦氏は、「CCSは日本の産業がカーボンゼロに達成するための現実的な解決策であり、国際的な連携が不可欠です。ディープCストアの成長は、アジア太平洋のエネルギートランジションを牽引するでしょう」と語っています。
一方、ディープCストアの創業者である車大仁氏は、この資金調達を喜び、「CStore1の実現に向けて、インキュベイトファンドとの強い協力関係を築いていきたい」と述べています。彼は兵庫県出身で、東京ガスおよびChevronでの経験を経て、ディープCストアを設立しました。
未来への展望
ディープCストアは、オーストラリアの埋蔵資源を活用して、グローバルな脱炭素化を加速させるというビジョンを持っています。現在、2つの大規模CO₂貯留鉱区がオーストラリアの北西海岸から約200〜250kmの海域にあり、10億トン以上のCO₂を貯留するポテンシャルがあるとされています。このプロジェクトは、今後の環境保護活動や持続可能なエネルギー開発の鍵を握るものと確信されています。