自治体のDX推進が遅れる理由とは?
テックタッチ株式会社が実施した調査により、官公庁や地方自治体におけるシステム導入・運用の課題が明らかになりました。対象は、IT・情報システム部門で働く111名の管理者やシステム担当者で、調査結果からは約4割が「自組織のDXは民間企業よりも遅れている」と感じていることが分かりました。
約4割が感じる遅れの理由
調査によれば、「やや遅れている」との回答は19.8%、さらに「大きく遅れている」と答えた職員は17.1%にのぼります。この結果は、自治体におけるデジタル変革の進展が、民間セクターと比較してかなり遅れを取っていることを示唆しています。
遅れの背景
遅れの理由として多くの職員が挙げたのは、「予算制約」(68.3%)、さらに「ITスキルを持った人材の不足」(63.4%)、そして「人事異動によるノウハウ喪失」(43.9%)です。特に、自治体は人事異動が頻繁であり、そのたびに新しい職員に業務を教え直さなければならず、教育や引継ぎに多くの時間を費やす現実があります。
システム利用に多くの時間が割かれる
日常業務で最も時間を費やしているシステムは「文書管理システム」が26.1%を占め、続いて「庁内ポータル/グループウェア」が22.5%となっています。これらは基幹的なものであるため、多くの職員がシステム操作に1日当たり2〜3時間も費やしているという結果も報告されています。
特に新しい業務システムの習得については、職員のITリテラシーに差があることが54.1%と多くの職員にとっての障壁となっており、「人事異動」による引継ぎの多さも48.6%を占めています。
SaaSの導入進展とその課題
また、約6割の自治体が1種類以上のSaaSを導入していますが、導入にあたっての最大の課題は「セキュリティポリシーとの整合が難しい」(57.6%)ことです。これにより、導入後のSaaS活用も難航しており、他のIT環境との整合性をとるための工夫が求められています。
未来の業務システムに期待される機能
調査結果では、今後の業務システムには「リアルタイムの操作支援機能」や「自動的に表示されるマニュアル」といった機能を求める声が多く上がっています。このような支援機能があれば、操作習得にかかる時間短縮や引き継ぎ負担の軽減が期待されています。
特に、職員が必要と感じる機能には「システム内での自動回答機能」が55.2%、次いで「操作に迷った際のポップアップ案内」が49.0%となっており、現場の職員が業務を円滑に進めるためにはこれらのサポート機能が必要です。
まとめ
このように、自治体のDX推進は多くの課題に直面しており、職員やシステム導入に関する様々な制約があります。特に人事異動やITリテラシーの格差などを考慮した教育体制の整備が急務です。それに加え、デジタル技術の活用を進めるための環境作りや、柔軟な支援体制の構築が求められるでしょう。今後の自治体におけるデジタル化の進展が期待されます。