CT画像をMRで観察！医療従事者向けトレーニングシステム「MR Anatomy」登場

CT画像を複合現実で！医療従事者向けトレーニングシステム「MR Anatomy」登場

近年、特に肺がん手術では、より小さく腫瘍を取り除く「区域切除」と呼ばれる手技が増加しており、医療従事者には精緻な肺の構造理解が求められています。この課題解決に向けて、日本メドトロニック株式会社、キヤノン株式会社、キヤノンITソリューションズ株式会社、ザイオソフト株式会社の4社が連携し、CT画像を複合現実（MR）で観察できるトレーニングシステム「MR Anatomy」の提供を開始しました。

「MR Anatomy」は、現実世界に高精細な実寸大の肺の3D画像を表示することで、臓器や血管、病変の位置関係など、解剖学的構造の理解を深めることを目指しています。これにより、医学生や若手外科医をはじめとする医療従事者の教育・トレーニングの質向上に貢献すると期待されています。

3D画像で立体的な構造を理解

「MR Anatomy」では、ザイオソフトの3次元医用画像処理システムで出力された3Dデータ化した肺のCT画像を、キヤノンのMRシステムで現実空間に実寸大の3D画像として表示します。2D画像では把握しづらかった、症例ごとに異なる病変の位置や血管の走行、臓器の大きさなど、肺の解剖学的構造を立体的に理解することができます。トレーニングでありながら実際の検査画像を使用することで、より深い理解を促進します。

簡単操作で手軽に利用可能

「MR Anatomy」は、3Dデータ化した肺のCT画像を専用アプリケーションにドラッグ＆ドロップするだけでセットアップが完了し、すぐに観察を開始できます。表示された3D画像は、体験者の手で拡大・縮小や回転させることができ、直感的な操作が可能です。

医療現場の課題解決への貢献

外科医にとって、臓器の構造を立体的に把握することは安全で正確な手術を行うために非常に重要です。しかし、その習得は容易ではなく、長年の経験が必要とされています。特に肺がん手術では、精緻な肺の構造理解が求められており、医学生や若手外科医にとって、従来の平面のPCモニターでの学習では、立体的な構造を短期間で理解することは容易ではありませんでした。

「MR Anatomy」は、MR技術を活用することで、実寸大の3D画像を立体的に観察することを可能にし、医療現場における教育・トレーニングの質向上に大きく貢献すると期待されています。

今後の展望

「MR Anatomy」は、2024年中にも4施設の呼吸器外科への導入を予定しており、その成果を踏まえ、今後3年以内に30施設への導入を目指しています。さらに、肺以外の臓器での活用や、術前シミュレーションにおける使用ニーズが高まった際には、医療機器としての申請も検討されています。

各社の役割

メドトロニックは、低侵襲な肺切除術に使用されるステープラーやシーリングデバイスなどの高度な技術を提供してきました。今回の開発では、医療現場の課題解決に向けて、キヤノン・キヤノンITSが共有するMRに関する知見と技術、そしてザイオソフトの持つ2DのCT画像をリアルな3D画像に再構成する技術を組み合わせることで、「MR Anatomy」を実現しました。メドトロニックは、4社合同での開発の実現をリードし、本システムの販売を担っています。

各社の紹介

- メドトロニック：ヘルスケアテクノロジーをグローバルにリードする企業。世界9万5千人以上の従業員を擁し、心臓ペースメーカ、手術支援ロボット、インスリンポンプなど、多様なテクノロジーと治療法を提供しています。
- キヤノン：商業印刷、オフィス複合機、インクジェットプリンター、レーザープリンター、医療機器など、多岐にわたる製品を開発・製造・販売する企業。世界で約17万人の従業員を擁し、革新的な技術で社会に貢献しています。
- キヤノンITソリューションズ：キヤノンマーケティングジャパングループのITソリューション事業の中核企業。SIやコンサルティング、ソフトウェア開発・販売事業を展開しています。
- ザイオソフト：3次元医用画像処理を専門とする企業。CT、MRIなどの医用画像診断装置の進化とともに、独自のソフトウェア技術で開発された製品を提供しています。

「MR Anatomy」は、医療従事者の教育・トレーニングを革新し、患者さんのより良い治療につながる可能性を秘めた画期的なシステムです。今後の展開に期待しましょう。