日本の農業再考:小農と地域コミュニティの未来を探る
昨年の夏以降、日本では深刻な米不足が続き、価格も高騰しています。この状況は、日本の農業の基盤が揺らいでいることを示しています。食料を得る手段としての農業は、単に作物を育てるだけでなく、自然環境を守り、地域との関係性を築く重要な役割も担っています。実は、今こそ日本の「農」のあり方を見直す良い機会です。
小農の可能性
ワーカーズコープ・センター事業団が展開する「小農」アクションに注目が集まり始めています。小農宣言は、国連が2018年に採択したもので、地球規模での農業の課題に対処するため、小規模で家族経営の農業を支援する重要性を訴えています。この理念に基づき、農とコミュニティの関係を強化し、人々が自給自足を意識するきっかけを作ることが求められています。
地域とのつながり
ワーカーズコープは、2020年に「小農・森林ワーカーズ全国ネットワーク」を設立しました。これにより、農業を通じた地域のつながりを深める取り組みが進められています。このネットワークに参加している人々は、高齢者や子ども、障害者など、異なるバックグラウンドを持つ仲間たちで構成されています。そのため、福祉や清掃、物流の仕事をする中で、農業の重要性を改めて認識しています。
「食は自己責任だ」という合言葉のもと、利用者たちが協力し合いながら、自分たちでできる形で農業に挑戦している様子はとても印象的です。
鳥をさばく意味
2024年5月には、神奈川県小田原市で「命をいただく」ことについて考える農業講座が開催されました。この講座では、動物の命を尊重することを重視し、受講生たちが実際に鳥を捌いて調理し、共に食事をする体験が行われました。普段私たちが食べている食材がどのようにして命をもらっているのかを学ぶ貴重な機会となりました。
講師の黒木義昭さんは、農の本質を学ぶことが小農にとって不可欠であると語りました。彼は、農業とはただの生産活動ではなく、命と食文化の深いつながりを理解することを重視しています。
各地の取り組み
九州・沖縄地域では、獣害対策を通じた小農活動が進められています。イノシシやシカによる被害が深刻化しているため、狩猟に興味のあるメンバーで「チームまたぎ」を結成し、生物多様性の保全に取り組んでいます。また、鹿児島県の「国分ほのぼの」では、子どもたちに安心安全な食を提供し、食育にも力を入れています。子どもたちが自ら給食を作る「子ども給食の日」を設けたり、自然栽培に挑戦したりする活動が行われています。
未来に向けたビジョン
ワーカーズコープ・センター事業団は、自然栽培に特化した団体との連携を図り、食の安全と環境に優しい農業を推進しています。また、収穫した作物を直接利用者が調理することで、農業の楽しさを実感できるように取り組んでいます。今後は全国的にこのようなモデル事業を連携して広げていくことを目指しています。環境にやさしい農業の実現を目指し、地域の力を再確認しながら食と農業の未来を創り上げていくことが求められています。
結論
日本の農業が抱える課題は多いですが、小農の理念と地域コミュニティの力が、新しい解決策を見出す鍵となります。今こそ、私たち一人ひとりが「命をいただく意味」を再考し、農業への関心を高めていくことが大切です。私たちの次の世代に豊かな食と環境を引き継ぐために、今からできることを始めましょう。