ARグラスが描く未来の都市体験
博報堂DYホールディングスの研究開発部門と空間コンピューティング企業のMESONが、AR(拡張現実)技術を用いた新しい都市体験の実証実験を行いました。この取り組みは、様々な観光施設や店舗が立ち並ぶ都市空間でのAR情報提示がどのように役立つかを検証するもので、特に徒歩移動中のユーザーにとってどれほどの利便性があるかを明らかにしています。
「モーション・サイバービューイング」の概念
研究者たちは、徒歩での都市体験中に視覚情報がどのように提示され、その可能性が広がるのかを「モーション・サイバービューイング」として定義しました。ここでの主要な点は、普及が進むARグラスを使用して生活者が周囲の情報を受け取る新しい方法が形成されることです。この技術により、デジタル情報と実際の空間が相互作用し、日常生活がさらに豊かになることが期待されています。
空間コンピューティングの進化と実証実験の設計
最近では、AppleやMetaを筆頭に、テクノロジー企業が空間コンピューティングへとシフトする動きが加速しています。スマートフォンに代わって、視線を下げることなく情報を取得できるARグラスの普及は、特に屋外の徒歩移動における期待を高めています。実際、実験では恵比寿エリアで、観光目的の徒歩移動を想定したAR体験が実施されました。
デザインの際には、都市の景観との調和が強く意識され、実際に街に馴染むように配色やトーンも調整されました。これにより、ARナビゲーションがリアルな都市環境の中に自然に融合し、高い魅力を引き出すことができました。
ユーザー体験への影響
ARナビゲーションとARコンテンツが互いに補完し合い、都市体験の向上に寄与していることが実証されました。ユーザーはARナビゲーションの存在があることでARコンテンツにアクセスしやすくなり、特に「ライン型ナビゲーション」が効果的であることが明らかになりました。
特に面白いのは、ナビゲーションのデザインがユーザーの周囲への注意をどう変えるかという点です。親しみやすいアバター型ナビゲーションが、ユーザーの周りの環境への注目を減少させるという予期しない結果も見られました。
今後の展開と社会への貢献
今回の研究成果に基づき、博報堂DYホールディングスはAR技術関連の特許も取得しました。これにより、都市空間における新しいマーケティングやコミュニケーション手法が可能になると期待されます。 街を歩くわずかな時間にもブランド情報を効率よく届けられる日が来るかもしれません。
しかしAR広告に関しては、ユーザーの視界を圧迫するような設計が求められるため、安全性を重視する必要があります。街の景観を大きく崩さず、快適な環境作りに貢献する情報設計が今後の大きなテーマとなるでしょう。
MESONについて
空間コンピューティング技術を駆使しているMESONは、新しい体験設計とプロダクト開発により、生活者と企業との新たな接点を創出しています。自社の取り組みを通じて、都市空間をもっと魅力的に変えるために貢献し続けることが期待されます。