2023年10月15日、東京の喜多能楽堂で、ウェールズ・アーツ・インターナショナル(WAI)が主催するパネルディスカッション「未来を育む芸術:伝統と創造で考えるSDGsの可能性、芸術と社会の関わり」が行われました。本イベントは、2025年にウェールズ政府が展開予定の「日本におけるウェールズ年(Year of Wales in Japan 2025)」の一環として位置付けられ、ウェールズでの「未来世代のためのウェルビーイング法」施行から10周年を迎えたことを祝うものでした。
この日、イベントにはウェールズ政府の国際関係・海外ネットワーク副局長フィオン・トーマス氏や、ウェールズ大学トリニティ・セント・デイヴィッド名誉副学長のジェーン・デイヴィッドソン氏、ウェールズに住むアーティストの森順子さん、能楽師・観世流シテ方の坂口貴信さんが出席しました。彼らは、芸術が持つ社会的な意義や未来世代への影響について熱心に語り合い、有意義な討論が展開されました。
フィオン・トーマス氏は、「私たちが目指すのは、ウェールズの文化を紹介すると同時に、日本のアーティストや専門家と協力して、持続可能で公平な社会を育むこと」と述べ、両国のアーティストのコラボレーションによる新たな可能性を強調しました。
続いて、ジェーン・デイヴィッドソン氏が「未来世代のためのウェルビーイング法」の意義について語りました。この法律は、人々が持続可能な視点で行動することを促し、特に「文化」がSDGsにおいて重要視されるべき要素であると指摘。彼女は、「文化とは私たちの伝統や価値観に根ざしているものであり、持続可能な未来を築くための重要な基盤である」と説明しました。
パネルディスカッションでは、「芸術と社会の関わり」というテーマのもと、坂口貴信さんが伝統芸能が持つ教育的価値や、観客を育てる重要性について触れ、一方で森順子さんはウェールズ語教育の重要性と、地域を活性化させる芸術の力を紹介しました。両者の意見が融合する中で、日本の伝統芸能とウェールズの現代アートが持つ共通点を見出し、未来の創造に向けたディスカッションが盛り上がりました。
イベントの最後には、エリネド・ハーヴ氏が映像『Pethau Bychain』の公開を発表しました。この映像は、ウェールズ在住のアーティストたちが「未来世代のためのウェルビーイング法」をテーマに制作したもので、他者や地球への思いやりを通じてウェルビーイングを促進する内容となっています。
また、2025年10月にはウェールズの劇団シアター・カムリによる『カルの旅』が東京で公演される予定で、これもまたウェールズ文化の一端を日本で体験できる貴重な機会です。ウェールズの芸術が日本に与える影響はますます広がりを見せており、今後の展開に期待が高まります。