絵本『ぼくが子どものころ戦争があった』を通して伝えたい平和のメッセージ

絵本『ぼくが子どものころ戦争があった』が描く平和の道

2025年の8月15日、日本は終戦から80年を迎えます。この節目を前に、戦争を体験した世代の貴重な声を伝えることの重要性が再認識されています。こうした理念のもと、ロクリン社が出版した絵本『ぼくが子どものころ戦争があった「いくさの少年期」より』の一部が無料で公開されました。この絵本は、昭和8年生まれの田中幹夫さんが自らの戦争体験を語ったものです。

思い出すべき歴史の一片

戦争がもたらした影響を知ることは、私たちの未来を考える上で欠かせません。この絵本では、1941年から1945年にかけての田中少年の日常、そして彼が目撃した戦争の実態が描かれています。彼の視点から語られる物語は、単なる歴史の記録ではなく、当時の「少年」が実際に見た光景や心の葛藤を生き生きと表現しています。

1941年12月8日、田中幹夫は朝の学校で行われた朝礼で、日本が戦争を始めたことを知ります。校長先生の力強い言葉や、担任の「日本は神国、絶対に勝ちます！」との言葉に影響され、幹夫は誇らしさを感じる一方で、経済状況が急速に悪化していく現実に戸惑いを覚えます。

戦争が奪ったもの

戦争が続く中、幹夫の生活は厳しくなります。物資の配給制が導入され、身の回りの大切なものが次々と奪われていく様子は痛々しいです。彼は叔父や大好きな担任の先生が召集令状を受け取る姿を見て、次々と戦場に送られていく情景に心を痛めていきます。

その後、食糧難が進行し、暮らしはますます困難になっていく様子が鮮やかに描かれています。戦局が悪化する中、彼は戦争がもたらす恐怖の影響を直接的に体験します。米軍による沖縄上陸や、日本中での空襲の現実に直面することで、戦争の恐ろしさを学んでいくのです。

決意と未来への希望

8月15日、広島と長崎に原爆が投下され、戦争は終結しました。勝利を信じていた幹夫たちですが、終戦を知ったその瞬間、彼らは大きな衝撃を受けます。自らの信じていた教えが誤りであったことを知り、何を信じればいいのか分からなくなってしまいます。

しかし、幹夫には未来への希望が芽生えます。彼は、多くの戦争で命を落とした人々に思いを馳せ、「ぼくたちは、戦争のない国を作ります。きっときっと、作ります」と心に誓います。これは、彼が大人になってからもずっと持ち続けている信念となり、のちに人権派の弁護士として子供たちの権利を守る活動へとつながっていきます。

繋がりと伝承の重要性

この絵本は、ただの読み物にとどまらず、戦争の実態を知るための重要な教育材料となります。読者にとって、過去を学び、現在を見つめ、未来を思考するためのきっかけとなることでしょう。特に、次世代に向けて「戦争のない社会」の実現を願う気持ちを育むことが大切なのです。

絵本は、子どもだけでなく大人同士の対話においても重要な役割を果たします。田中幹夫さんの実体験をもとにした物語は、平和を願う多くの人々にとって、将来を語り合うための貴重な素材となることでしょう。こうした取り組みが多くの人々に広まることを願っています。

今後の活動と展望

戦後80年を迎え、日本が再び平和の道を歩み続けるためには、こうした記録や教授が不可欠です。株式会社ロクリン社は、この絵本の出版を通じて、さらに多くの人々に伝えたいメッセージを発信していきます。ぜひ、この絵本や関連の紙芝居を活用し、世代を超えて思いを共有し続けることが大切です。未来を築くのは、今の私たちの姿勢にかかっています。