慶應義塾大学研究:マラソン大会参加者の心停止リスクに関する調査結果
慶應義塾大学スポーツ医学研究センターと国立病院機構霞ヶ浦医療センター、丸紅健康開発センターの共同研究グループは、2011年から2019年にかけて開催された日本陸連公認マラソン大会における心停止発生状況を詳細に分析しました。
この大規模調査は、516大会、延べ約410万人の参加者データを対象としています。その結果、69件の心停止が発生し、そのうち68件が救命されました。驚くべきことに救命率は98.6%に上ります。しかし、参加者10万人あたりの心停止発生率は1.7と報告されています。
注目すべきは、年齢層別の発生率です。40歳未満では0.9、40歳代で0.9と比較的低い一方、50歳代は2.6、60歳以上では5.5と、年齢が高くなるにつれてリスクが急激に増加することが明らかになりました。
さらに、性別による違いも分析されています。男性では年齢の上昇とともに心停止発生率が増加する傾向が明確に示されましたが、女性では年齢との関連性は明確ではありませんでした。このことから、特に60歳以上の男性ランナーは、マラソン大会への参加前に健康状態を適切に確認するための検査を受けることが推奨されます。
この研究は、マラソン大会参加者の安全確保という観点から、非常に重要な知見を提供しています。高齢者、特に男性ランナーは、自身の健康状態を把握し、適切な準備を行うことで、安全にマラソンを楽しむことができるでしょう。
研究の意義と今後の展望
今回の研究成果は、マラソン大会の安全管理対策の改善に大きく貢献すると期待されています。具体的には、年齢層や性別を考慮したリスク評価システムの開発や、参加者への健康指導プログラムの充実などが考えられます。
また、この研究は、マラソンに限らず、高齢者のスポーツ活動全般における安全確保の重要性を改めて認識させるものです。今後の研究では、心停止発生要因の解明や、より効果的な予防策の開発を目指していくことが重要となるでしょう。
参加者の健康管理の重要性
マラソン大会は、健康増進に繋がる素晴らしいスポーツイベントです。しかし、参加者の健康状態によっては、リスクを伴うことも事実です。今回の研究結果は、参加者一人ひとりが自身の健康状態を正しく理解し、適切な準備と管理を行うことの重要性を改めて示しています。
健康診断や体力測定などを活用して、自身の体力レベルを把握し、無理のないトレーニング計画を立てることが大切です。また、大会当日も、体調の変化に気を配り、異常を感じたらすぐに医師に相談するなど、安全確保を最優先に行動することが求められます。
マラソン大会を安全かつ楽しく楽しむためには、参加者自身の健康管理が不可欠です。この研究成果を参考に、安全で充実したマラソンライフを送ることが重要です。
研究発表
この研究成果は、2024年11月14日にEuropean Resuscitation Councilが発行する国際学術誌『Resuscitation』に掲載されました。